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ずっと「言葉」に支えられてきた。名言や詩歌、せりふ、歌詞など、種類は様々。困ったときや悩んだときに、頼りになる言葉がいくつもある。不安や懸念が絶えない今、大事にしてきた言葉を、思い浮かぶ限り、挙げてみたい。

「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」。童話「星の王子さま」で最も有名ともいえるくだりだろう。キツネが王子様に教えた人生訓だ。

フェイクニュースやデマが当たり前に飛び交うようになった。ディープフェイク動画が出回るようになった現在では、記者会見やインタビューすら信頼の根拠になり得ない。でも、上っ面の言葉ではなく、現実をまっすぐに見れば、うそを見破れる。私たちは日々、「心で見る」ことを試される立場となりつつある。

「私は最悪の民主政治でも最良の専制政治にまさると思っている」。アニメ作品「銀河英雄伝説」で自由惑星同盟の名将、ヤン・ウェンリーが発した言葉だ。強大な銀河帝国に君臨する帝王に向かって、歴史家として民主主義を重んじる信念を堂々と述べた。

漫画やアニメは日本が世界に誇る文化だ。歴史や政治を学べる作品も少なくない。「銀河英雄伝説」はストーリーテリングの見事さに加え、民主主義を考えるうえで最高の教科書であり得ると感じる。歴史家で民主主義者で、しかも知将のヤンは戦いに臨んで兵士にこう訓示する。「(この戦いに)かかっているものは、たかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば、たいした価値のあるものじゃない」。

言葉との出合いは読書に導かれることが多い(写真はイメージ) =PIXTA

言葉との出合いは読書に導かれることが多い(写真はイメージ) =PIXTA

困難に直面したときの向き合い方を教えてくれるのは、俳優・拳法家だったブルース・リーの名言「Be Water」だ。「水(のように柔軟)であれ」という意味。香港で起こった民主化デモでは、参加者たちがスローガンに掲げた。

「柔軟であれ」というのは、権力側に従えという意味ではない。水のように器に合わせて、自在に形を変えつつ、水としての本質は変えないというしなやかでしたたかな身の処し方を促している。白居易の漢詩にも「水は方円の器に随(したが)う」という。リーが心を寄せたという老子の思想にも通じる。

新型コロナウイルス禍に直面して、私たちも日々、難しい選択を迫られた。きょうは出社するか、買い物は、外食は、ワクチンはなど、これまでは考えずに済んだような事柄をいちいち熟慮する羽目になった。人と会う楽しみを奪われ、めいりそうになる中、へこたれまいと思う気持ちを、リーをはじめ、たくさんの言葉が支えてくれた。

遠い場所で起こった出来事への共感を、どう持ち得るか。物事を大づかみにする態度は時に「自分事」化を邪魔する。タレントのビートたけしさんは東日本大震災が起きた際、被害の大きさを、集計した数字で示すメディアに対して、「2万人が亡くなった1つの事件」が起きたのではなく、「1人が死んだ事件が2万件あったってことなんだよ」と述べて、広く共感を呼んだ。

言葉は見方や解釈を変える力を持つ。上記のたけしさんの言葉は、統計上の数字を生身の痛切事に置き換える。言葉がなければ、埋もれてしまう出来事もある。各種の「ハラスメント」という言葉が認知されて、被害の実態もみえるようになってきた。新語の乱造には懸念もあるが、現実を「見える化」するうえで、実態をとらえた言葉の価値は大きい。

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