進化するコーヒー通販 「あなたの味」を探し出す

「自分はゼロからイチを生み出すタイプ」と下村さん。株式の上場やアジアでの事業展開も考えている(東京・渋谷のオフィス)

あなたに合うコーヒーを毎月、定期便で送ります。その中から自分にとってピカイチの味を見つけ出しませんか――。POST COFFEE(ポストコーヒー、東京・目黒)のサブスクリプション(定額課金)サービスはそんなコンセプトのネット通販だ。新型コロナウイルス禍の巣籠もり需要も追い風に、最高経営責任者(CEO)の下村領さんは「楽しく豊かなコーヒーライフ」の手引きに日々いそしむ。選ぶ楽しさ。淹(い)れる楽しさ。そんなコーヒーにまつわる体験価値を起点に、次々と新手も繰り出している。

ライト層開拓しユーザー数40倍に

「サブスクは当初の狙い通り、それほどコーヒーに詳しくないライト層を開拓できたと思います。女性の利用者も多い。ユーザー数は、正式にサービスを立ち上げた2020年2月の35~40倍に膨らみました」

穏やかな口調で、下村さんは確かな手応えをこう語る。「おうちコーヒー」愛好者が増えているのも心強い。まだサービスの仕様に改善の余地はあるが、解約率は数%にとどまる。

ポストコーヒーのサブスクを利用するには、まず同社サイトで会員登録(無料)し、「コーヒー診断」を受ける。「朝のトーストにのせるのは」「好きなフルーツは」といった直観的な質問にいくつか答えると、自分の好みとおぼしき焙煎度や酸味の強さが割り出される。さらに豆か粉か、砂糖やミルクを使うか、などの条件を指定して申し込めば、診断結果に合わせた3種類のコーヒーが郵便受けに毎月届く。

コーヒー診断の画面。10問程度の直感的な質問に答えると好みの豆のタイプが割り出される
割り出された顧客好みの豆のタイプ。独自のプログラムで診断の精度を上げている

月1回(3杯分45㌘×3種類)の定期便なら月額が最低1598円(税込み)で送料は無料。1杯分が約178円という計算だ。3種類の組み合わせは毎回変わる。利用者がネットでフィードバックした豆の評価が次回以降の品ぞろえに反映される。

現在、コーヒーサブスクはいくつもあるが、ポストコーヒーは15~20カ国の豆を常時40種類(年間150種類以上)ほどそろえ、組み合わせは最大で約30万通りという豊富なバリエーションが特徴だ。豆はすべて高品質のスペシャルティコーヒー。当初は自社焙煎の豆のみだったが、今は東京のLEAVES COFFEE ROASTERSなど、国内外の有名ロースター(焙煎業者)の豆もラインアップに加わっている。

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「提供したいのはコーヒーのあるライフスタイル」