「何者かになりたい」 大人の思春期との向き合い方

リモートワークの普及や雇用の流動化――。ビジネスパーソンを取り巻く環境が激変するなか、キャリアや仕事の悩みを抱える若手社会人は少なくありません。連載「20代のおしごと相談室」では、メンタル問題のプロである産業医の大室正志さんと、ビジネスのプロである経営共創基盤の共同経営者、塩野誠さんが、20代のお悩みに答えていきます。

今回の相談者は、地方私立大学3年生の男子学生Eさんです。就職活動を進めるなかで、何をしたらいいかわからなくなったと言います。

お悩みカルテ #5
「思春期から脱するには?」(私立大学3年)
 第1回の記事を読み、自分もまだ「大人の思春期」の真っただ中にいると思いました。自分が本当にやりたいことに夢中になっていると、変化し続ける社会から取り残されてしまうのではないかという不安に駆られます。今自分が何を頑張ったらいいのか、不明瞭になってしまいました。就活が始まってOB・OG訪問をしていますが、今を精いっぱい生きることに限界を感じています。
 大人の思春期から脱するためにはどうすればいいでしょうか。第1回で言及されていた、(学歴や就職などで社会的評価を固定されることはない)「変動相場制」だからこそ、今は何を頑張るべきでしょうか。

「M―1グランプリ」は夢を諦めさせる装置?

大室 第1回では、自分に興味が向きすぎている「大人の思春期」の問題について話しましたね。思春期で言うと、漫才のコンテスト「M-1グランプリ」ってあるじゃないですか。これは一夜にしてスターになれるというシステムで。

実は創設者の島田紳助さんがこだわったのは、応募条件の「結成10年以内」なんです。なぜかというと、10年で芽が出なかったらもう芽が出る確率が低いから、人生を考え直すために諦めさせる装置でもあったわけですよ。最近だと錦鯉(にしきごい)さんみたいに50代で優勝というのは美談である一方、可能性がある状態をずっと緩やかに続けなければならない状態って結構しんどいんです。

塩野 長年苦労してスターになった人が注目されちゃいますしね。諦めることによって身軽になるっていうのがない世界は超つらいですよね。

大室 通過儀礼みたいなことが昔に比べると少なくなってるんだと思います。私の出身大学は北九州にあるんですけど、北九州の成人式って有名で。

塩野 ヤンチャなやつでしょ(笑)。

大室 そう、みんなロックバンドの氣志團(きしだん)みたいな格好でくるんです。成人式で派手にかますわけですが、北九州は工場に就職する人が多くて、「ここから先はもう大人になるしかない」という、ある種の諦観とともにある派手さなんです。一方で今は「ここから先は大人。はい終了」と世の中が言ってくれないので、自分で自分の人生の節目を考えるということが、今後重要になってくると思うんですよね。

塩野 転職を続けちゃう人もそういう傾向がありますよね。節目が見えない問題です。

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身軽に転身するフィンランド