声がかすれて出にくい… 声帯のダメージを防ぐには?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)加齢
(2)会話の減少
(3)乾燥
(4)マスク着用
(5)飲酒
答えは次ページ
答えと解説
正解は、(4)マスク着用 です。
「コロナ禍で人と話す機会が減ってから、たまに会話をすると、声がかすれて大きな声を出しづらくなった」「年をとるにつれ、カラオケなどで声がなめらかに出なくなってきた」…。そんな経験をした人もいるのではないでしょうか。そうした人は、加齢などの影響で、声帯がダメージを受けているかもしれません。
声帯研究の第一人者として知られる、東京医療センター耳鼻咽喉科音声外来の角田晃一先生は、声帯は「加齢」によって老化すると話します。
声帯は筋肉の上を結合組織や粘膜が覆った構造です。年をとってくると「声帯萎縮」といって声帯がやせて縮むため、2枚ある声帯がきちんと閉じず、隙間ができるようになってしまいます。その結果、声が出しづらくなったり、かすれたりするのです。声帯が萎縮すると、食べ物や唾液が気管に入りやすくなり、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすリスクも高くなります。ものを飲み込むときは閉じた声帯と喉頭蓋(こうとうがい)が気管の入り口をブロックして流入を防ぐのですが、声帯が萎縮して隙間ができると、そこから食べ物や唾液が気管に入りやすくなるのです。
声帯が縮むと、声を出しづらくなる
「加齢によって声帯の萎縮が起こるのは、筋肉の萎縮で声帯の張りがなくなることが影響していますが、声帯の筋肉の周りにある結合組織に含まれるヒアルロン酸やコラーゲンも、加齢のため減ることでやせてきます。私どもの病院で行った調査によると、65歳以上の高齢者の約7割が声帯萎縮を起こしていました。症状が進むと、本当にしゃべれなくなってしまうこともあります」(角田さん)
人と話す機会が減ったら声を出しづらくなる
加齢で進む声帯萎縮ですが、原因はそれだけではありません。ほかの筋肉と同じく、声帯の筋肉も、声帯を外から動かす筋肉も、「使わない」と衰えます。「どんな名投手だって、オフに練習せずに遊んでばかりいたら、速い球が投げられなくなるのと同じです」(角田さん)
角田さんによると、加齢によるヒアルロン酸やコラーゲンの減少は防ぎようがありませんが、筋肉は使っていればある程度は維持できます。実際、よくしゃべって声帯がさほど衰えていない高齢者は、肺炎にならずに長生きできる傾向があるそうです。ですから、年をとったら、声帯が萎縮しないようにどんどんしゃべることを心がけましょう。「長生きのためには、しゃべり続けることが大事です」(角田さん)
そのほか、声の不調には「空気の乾燥」も関係します。「毎年冬になると声がかすれてくる」という人もいますが、湿度が低い冬は声帯も乾燥しやすくなるので、人によっては、声が出しづらくなるのです。「声を出すとき、声帯は1秒間に200~300回振動しています。ソプラノ歌手になると1000回くらい振動します。声帯が乾いた状態だと、エンジンオイルがないエンジンのようなもので、うまく振動できなくなって声が出しにくくなるのです」(角田さん)
声帯を乾燥から守るためには鼻呼吸を意識することが大切です。「鼻はエアコン付き空気清浄機の役割があり、鼻で呼吸すると、鼻の中で、外から吸い込んだ冷たく乾いた空気に適度な温度と湿度が与えられる」(角田さん)からです。逆に、鼻炎になると口呼吸になり、乾いた外気が直接気管に入ることになり、声帯が乾燥しやすくなります。タバコ、アルコールも、のどの乾燥を増長させるので要注意です。
一方、のどの保湿にはマスク着用がお勧めです。マスクには、ウイルス感染などを防ぐ以外に、口内や気道の乾燥を防ぐ効果もあるからです。「実際、コロナ禍でみんながマスクをするようになってから声帯ポリープが減っているんですよ。特に、空気が乾燥する冬は積極的にマスクをすることをお勧めします。声の異変が気になる人は、寝るときもマスクをしましょう。鼻まで覆うとベストですが、それが嫌な人は鼻を出してマスクをするのでもいいです。これなら息苦しさもあまり感じないはずです」(角田さん)
[日経Gooday2022年5月2日付記事を再構成]
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