岡島 義の「眠りの森」探検

不眠の敵 目がさえてしまうNGツールとNGワード

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「睡眠(休養)は、栄養、運動と並ぶ健康の3要素」と語るのは、東京家政大学で睡眠行動科学研究室を主宰する岡島義氏。東京都内のクリニックで睡眠障害や不安症に悩む人々への支援も行っています。連載では、健康のもととなる「質の高い睡眠」を実現するために、知っておきたい眠りのディープな世界を紹介していきます。 

前回は、快眠のための3つの柱である「質」「量」「リズム」に基づいて、不眠のタイプを分類し、それぞれにあった生活での対策について提案しました(第3回参照)。生活習慣を整えることで睡眠は大部分が改善し、向上します。そこでやってはいけないのが、眠ろうとしている脳を揺り起こしてしまうことです。興奮や動揺によって覚醒度が上がってしまうからです。今回は、「覚醒度」をテーマに睡眠を妨げてしまうNGツール、NGワードについて紹介していきましょう。

■こころ(精神)はからだ(体)を上回る

生活習慣の改善は、いわば「眠るための環境・体づくり」です。就寝時刻に向けて、いかに眠りやすい環境に整えていくのかが、カギとなります。ところが、眠りやすい環境は整えているのに眠れない場合があります。

次の状況を想像してみてください。

・パートナーと口論になって、お互いイライラしたまま寝床に入った。

・寝る準備をしている時に「今晩も眠れなかったらどうしよう」と心配になる。

・友人から「あの人、あなたの悪口言いふらしているわよ」と知らされた。

・深夜放送のスポーツ競技で応援しているチームやアスリートが勝利した。

こんなときは、それまでの眠気はどこへやら。楽しい・嫌いに関係なく、あなたのこころ(精神)が大きく揺さぶられると脳が興奮してしまいます。これが就寝直前であれば、いつもの就寝時刻、体が眠ろうとする時間になっても気持ちがたかぶっていて眠れません。

脳を興奮させるのは、こころ(精神)の状態だけではありません。目に当たる光の種類によっては脳を興奮させる作用があります。光の明るさは、照度(ルクス:lux)と色温度(ケルビン:K)で表します。照度が上がるほど眠気を飛ばします。色温度は高くなるほど青味が増し(いわゆるブルーライト。光の三原色で白く見える)、低くなるほど赤みが増します。色温度が低い方がリラックスして、眠りを促すともいわれています。つまり、夜の時間帯にどのような光を浴びているかによって、寝つきが変わってくるともいえます。遅くとも就寝1時間前には、脳の興奮を静め、穏やかモードに入る必要があります。

■脳を興奮させるNGツール

以下は、夜間に脳を興奮させるNGツールとその理由です。

スマホやパソコン:スマホやパソコンはディスプレーの色温度の影響を受けますが、それよりも、その内容(以下に挙げたチャット・メール、ネット動画・ゲーム、SNSなど)の方に問題があると考えられています。

チャット・メール(LINEなど):通知が来ると受動的に見てしまいますね。内容が面白かったり、驚いたり、イライラしたりと、かなりこころが動揺します。また、「心配ごと」につながる可能性もあります。

ネット動画・ゲーム(YouTubeなど):たいていは興味のある内容を見てしまうため、脳が興奮してしまいます。

SNS(インスタグラムなど):リア充な人と自分の生活を比べて落ち込んだり、好きなタレントの投稿に興奮したりと、興奮と動揺の温床です。

心配ごと:明日のスケジュール(仕事や趣味など)を考えたり、他人から言われたことにあれこれ悩んだりすることは、覚醒を助ける栄養ドリンクのようなものです。しかも、最悪なことにそれが習慣化すると、横になると考え始めてしまうという自動化現象に陥ります。

時計:「今何時か確認する」という当たり前の動作ですが、時間を確認することで、「起床時刻まであと何時間しかない!」と焦りを生んでしまいます。これが覚醒を促すことにつながります。

本やテレビ番組の内容:本の中でも小説のように次が気になるジャンルは、目がさえてしまうことも。テレビは近距離で見るわけではないので、やはり内容の方が問題になります。心を動揺させる内容(例えば、スポーツ観戦、悲惨なニュースなど)には注意が必要です。

パソコンのディスプレーや白色の蛍光灯(LED電球も含む):そろそろ寝ようと思っても、目から取り込んだ高い色温度の光によって、寝つきが悪くなります。寝つきが悪くなることによって「心配ごと」が浮かんできたり、「眠れなかったらどうしよう」と不安になったり。眠れないからとスマホやパソコンをいじり始めるきっかけにつながります。

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