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かつて部屋探しといえば、キオスクやコンビニで買った物件情報誌に目を凝らしたり、不動産屋を直接訪ねたりするのが当たり前だった。それがインターネット上のポータルサイトでできるようになったのは1990年代半ばのこと。LIFULL(ライフル)が運営する「LIFULL HOME'S」(ライフルホームズ、当時は「HOME'S」)はその草分けで、同社社長の井上高志氏(53)が26歳の時にゼロから立ち上げたのが始まりだ。

同氏はリクルートコスモス(現コスモスイニシア)に入社後、わずか4年余りで独立。「利他主義」を社是に掲げ、地方創生や介護など幅広い事業を展開するグループ企業を作り上げた。だがそのキャリアからは想像できないほど、大学生までは何事も中途半端で凡庸だったという。一体何が彼を変えたのか。

井上氏は神奈川県出身。父は上場企業のサラリーマンという典型的な中流家庭で育った。3人きょうだいの末っ子で引っ込み思案。「勉強もスポーツも『中の中』で、班長、級長、生徒会長など『長』がつくものには一切無縁だった」と振り返る。

青山学院大学時代は、シーズンスポーツのサークルとアルバイトに明け暮れた。ぼんやりと就活を始めた学生にも、バブル末期の売り手市場は優しかった。「青学」というラベルだけで複数の大手企業から難なく内定が取れ、「俺ってイケてる?」と勘違いしそうになった。が、本命と思って受けたリゾート開発のデベロッパーの面接で落ち、ハッと目が覚めた。

「他の学生と肩を並べた時、自分には何も語れることがなかったんです。早稲田の学生は日本経済の現状分析をからめながら堂々と志望動機を話し、別の学生は、早くに両親を亡くしプロボクサーを目指していたが、けがで断念し、努力して大学に入ったなんて話をしている。それに比べて私は、バイトで裏方の仕事に喜びを感じました、という程度のエピソードしか話すことができず、自分がいかに何の努力もせず、何も成し遂げてこなかったかを痛感させられました」

LIFULL社長 井上高志氏

LIFULL社長 井上高志氏

彼女に振られ、突如思い立つ

そこに追い打ちをかけたのが、失恋だった。サークル仲間でほれ込んでいた彼女からある日、こう切り出された。「私はニューヨークに留学してニュースキャスターを目指すつもり。離れ離れになるし、もう別れましょう」

ニュースキャスターになる――。そんな不可能と思えるような夢であっても、彼女は恐れることなく口にし、自分を信じて一歩を踏み出そうとしていた。それに対し、何事も「中の中」で周囲に流されているだけの自分。その落差に気づき、打ちのめされた。振られるのも当然だと思った。そして2週間が過ぎた頃、突如思い立った。

「意識も行動も全取っ替えし、人生をかけて一つのことを成し遂げよう」

彼女を見習い、自らに「就職後5年以内に起業する」という高いハードルを課した。起業をいきなり目指したのには、1歳上の優秀な兄へのライバル心もあった。

「兄は小さい頃から何でもそつなくできて、一流大学から総合商社に入っていました。対抗しようにも普通の会社員ルートではきっとかなわない。であれば起業という別ルートで行くしかないなと」

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