一方、歯と歯の間や歯と歯肉の境目につく歯石はセルフケアでは除去できない。「歯石は表面がざらざらしているため歯周病菌の絶好のすみかになる。歯科医で定期的に除去してもらうこと。予防歯科を看板に掲げている歯科医をかかりつけ医にするといい」(天野教授)。

舌苔は歯周病菌の温床 舌ブラシでケア

舌の表面に白や淡い黄色の苔(こけ)のようなものがついていないかもチェックを。「舌苔(ぜったい)には細菌や食べかすが貼り付き、歯周病菌を育てる温床になる。痛みがなければ歯ブラシで奥から手前にそっと拭い、痛みがあるときは市販の舌ケア用のへらやブラシで掃除を。舌苔を取り除くと口臭も予防できる」(天野教授)。

また、口呼吸は唾液量を減らすので要注意。「加齢によっても唾液量は減るので、自覚症状がある人はよく噛むことを意識するだけでなく、耳の下から顎の下にある唾液の出る腺を押す唾液腺マッサージを行って分泌を促してほしい」(天野教授)。

自分の歯で噛める健康な口を守ることは食べる楽しさだけでなく、会話を弾ませ、社会的な孤立を防ぐことにもつながる。まさに身体的・精神的・社会的という3要素の充実を目指すウェルビーイングの基本だ。日々のこまめなケアで口の健康寿命を延ばそう。

[1]PLoS One. 2013 Jun 5;8(6):e64113.

[2]J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2022 Mar 1;glac052.

[3]J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018 Nov 10;73(12):1661-1667.

[4]Sci Rep. 2019 Oct 22;9(1):15127.

(ライター 柳本操、イラスト 三弓素青)

天野 敦雄
大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授。大阪大歯学部卒。同大予防歯科学助手、米ニューヨーク州立大歯学ポスドク(博士研究員)などを経て、2000年から現職。歯周病菌の分子機構の解明や歯周病菌阻害剤、近未来の口腔ケア用品のためのインテリジェントマテリアル(次世代技術素材)などの開発に取り組む。個々の遺伝子と生活習慣の違いから将来の発病を予測する予測歯科による口腔疾患予防を目指す。

「ウェルエイジング」の記事一覧はこちら

日本の健康経営を推進するポータルサイト

健康経営優良法人認定制度における申請受付をはじめ、健康経営銘柄・健康経営優良法人認定企業の紹介、事例やデータ等を掲載。

>> 詳細はこちら