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鍋用の調味料として、調味料大手のミツカンホールディングスのぽん酢「味ぽん」はおなじみの存在だが、前身商品が発売されたのは1964年の東京オリンピック後と、意外にも戦後のデビューだ。原型となった調味料はもともと関西から九州で鳥肉の鍋「水炊き」に使われていた。この割とローカルだった調味料を、全国に広めた立役者が味ぽんだ。ギョーザや大根おろしにもかけるなど、今や家庭で定番的な調味料に「出世」した味ぽんは、どうやって世に出たのか。

料理の味付けにも使うぽん酢の分野で味ぽんは圧倒的な知名度を誇る。ミツカンは販売数量を明らかにしていないが、「年間では3人に1人が味ぽんを買っている計算になります」と、味ぽんのマーケティングを担当するMD本部商品企画部商品企画2課の掛田実穂さんは説明する。

味ぽんが有名なミツカンだが、鍋つゆでも「ごま豆乳」や「キムチ」など、様々なフレーバーを販売していて、この分野でもミツカンは国内シェアが約30%の最大手(いずれもインテージSRI+調べ)だ。さらに「金のつぶ」ブランドの納豆や、「追いがつおつゆ」のめんつゆでも国内シェア2位となっていて、家庭の食卓では存在感が大きい。

「水炊き+ぽん酢」に感動 開発に着手

今の味ぽんの前身ともいえる最初の商品は「ぽん酢<味つけ>」だった(64年に発売)。当時は、かんきつ系の果汁と食酢を合わせたものを「ぽん酢」と呼び、これにしょうゆで味付けしたから、味付きぽん酢と位置づけた。ミツカンは先行して60年から「ぽん酢」として商品化している。今でも白と緑色のラベルに緑色のキャップのデザインで販売しているロングセラー商品だ。

味付きを商品化することになったきっかけは、当時の社長だった7代目中埜又左エ門だ。取引先との宴会で鍋料理「水炊き」を食べた際、水炊きと一緒に出てきたぽん酢のさわやかな味に魅了された。

「味ぽん」(ミツカン)は鍋料理の代表的な調味料に育った

「味ぽん」(ミツカン)は鍋料理の代表的な調味料に育った

52年に経営トップとなった7代目又左エ門は「この味を全国に届けるには、どうしたらいいか」と考え、鍋用調味料の開発に着手したという。後に「しゃぶしゃぶのたれ」や「おむすび山」「五目ちらし」などのヒット商品を生んだ7代目又左エ門は自らの舌で新商品を考えてきた人だった。

ミツカンの源流は愛知県半田市にあり、今も本社はこの地にある。その愛知出身の7代目又左エ門が初めて味わって驚いたことでもわかる通り、調味料のぽん酢は当時、一般家庭にはあまり普及していなかった。消費者に「鍋のお供」として広く受け入れられるようになったのは、70年代以降の話だ。

ぽん酢にしょうゆを混ぜると、かんきつ系の果汁が劣化しやすいため、当時は長期保存も難しかったこの難点が邪魔して、もっぱら水炊きなどの店が専門に扱う程度だった。

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