ビジネス議論で論破はNG 相手巻き込む上策立ち回り術

「論破」式のしゃべりは敵を増やしがち(写真はイメージ) =PIXTA

議論が盛り上がるのは悪いことではない。立場や視点の違いが浮き上がり、相互理解や納得、合意に向かいやすくなるという期待が持てる。だが、はやりの「論破」はどうか。上策とは思えない。論破はどこがまずいのか。

まず「論破」の意味をおさらいしておこう。いろいろな国語辞書では「議論して相手の説を破ること」「相手の理屈を立ちゆかなくさせること」などの説明が見付かる。最も一般的な理解に近いのは「言い負かすこと」だろう。つまり、通常の議論とは異なり、「勝ち負け」の性格を帯びる点が論破の特質だ。

使い道はある。たとえば、裁判が一例だ。勝ち負けに傾かない和解や調停を目指すケースもあるが、主張が真っ向から対立する場合は「勝訴」を目的に突き進む格好になりやすい。意見を戦わせる過程では、相手側の弱みを突いて劣勢に追い込もうと試みる戦略を選ぶパターンが多くなる。

だが、こういった勝ちを狙う議論はビジネスシーンでは必ずしも主流ではないだろう。経営方針の決定や、新商品のネーミング、予算のぶんどり合いなど、競う構図の議題は珍しくない。でも、異なる意見・主張を持つ相手をやり込める論法が常に選ばれるわけではない。とりわけ社内での議論ではそうだ。

社内での議論が「論破」式になりにくいのは、その後の運びに差し障るからだ。プロジェクトは会議室内の議論で終わるわけではない。むしろ、その後の実務が肝心だ。いくら方針を決めても、実稼働が伴わなければ、求める成果は得にくい。逆に、会議での議論結果がややあいまいでも、現場が一丸となって動けば、成果につながるだろう。つまり、強い実稼働を引き出せるかどうかが事業の成否を分けるわけだ。

方針が決まった後の「ワンチーム」が大事だと考えると、わだかまりを残しがちな論破はビジネス議論の戦術としては好ましくなさそうだ。なぜなら、大勢の前で論破された「敗者」側はその論法自体を不愉快に感じて、結論が出た後も、「勝者」側への恨みを抱きがちだからだ。「勝者」側がいたずらに勝ちを誇るような態度をみせれば、反発心はさらに強まりかねない。

ビジネスシーンでの議論で目指すべきなのは、結論が出た後に、一致団結してゴールに向かえる態勢づくりだ。「ノーサイド」「挙党態勢」「雨降って地固まる」的な運びといえる。自分たちの意見が通らなかった側も巻き込んでワンチームを組み上げるには、議論のプロセスで遺恨を残さない気配りが欠かせない。論破は負けた側をおとしめるような性質を帯びていて、負けた側を傷つけやすい。その意味からいえば、ビジネス議論には不向きだとみえる。

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相手を巻き込む「上策」の議論術