アナログ時計は世代を超えて受け継がれる
「デジタル化が行き過ぎると揺り戻しがあり、バランスを取る流れの中で、物理的な時計の盛り上がりが生じます。スマートウオッチは半年ごとにより新しくなり、古いものは捨てられていきます。かたやアナログ時計は何百年も何十年も世代を超えて受け継がれ、結婚や仕事の成功など人生のイベントと結びついて手元にやってくる。我々は究極的にはアナログなものを求めているのではないでしょうか。メタバースについても議論がなされていますが、僕自身、メタバースの中でスーパーヨットが欲しいかというと、全くそうではない。海で手こぎのボートをこぎたいと思います。デジタルもアナログも存在しますし、アナログは生き続けるのです」

「時計ブームといわれていますが、何も高齢者がノスタルジックに買っているからではありません。買っているのは20代、Z世代なんですよ。彼らは、時計やジュエリーが反映している物理的なつながり、モノにこめられた意味を求めているんです。Z世代がアナログ時計に興味を持っているんですよ」

――そうしたアナログな時計を販売するのはデジタル施策。時計業界でも先端を走っています。
「そう、売り方ではデジタルを追求しています。時計業界で初めてブロックチェーンを使って時計の真正、透明性を担保し、サブスクリプションサービスとして一定期間、複数の時計を試せるブライトリングセレクトも始めました。多くの人がデジタルでコミュニケーションをしている今、そこに参画せずにモノを売ろうと思っていたら、衰退の一途をたどります。最先端の技術を使うけれど、売っているのは250年変わらない時計というのが面白い。デジタル施策の取り組みでは他ブランドを引き離していると思いますが、まだまだやりたいことがたくさんあります。私が目指すところから考えると、デジタル施策の成績表は100点満点の70~80点というところです」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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