
2022年問題――企業の人事担当を悩ませている懸案があります。大卒年齢に相当する22歳人口が今年を境にぐっと減るのです。若手人材の争奪戦激化が予想されるなか、せっかく採用した若手社員が辞めてしまわないよう、人事担当者の奮闘が続いています。
KDDIは20年度新卒入社から、職種別採用「WILLコース」を始めました。担当する業務分野を入社前に確約します。法人営業やデータサイエンスなど12領域から選べます。初年度は総合職採用全体の2割でしたが、22年度は5割に増やしました。日本企業は終身雇用を前提に配属・異動の主導権は会社が握っていましたが、本人の意に沿わない配属は離職リスクを高めます。そこで新入社員の希望がかなうように職種別採用を導入しました。
若手社員の悩みを察知し、不満の芽を早めに摘むことが離職防止には有効です。メンターなどの相談相手を任命する制度を取り入れる企業も増えています。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で対面コミュニケーションは取りづらくなりました。上司や同僚との人間関係も築きにくく、帰属意識の低下は転職のきっかけになります。
厚生労働省の調査では、大卒入社3年目の離職率は21年春時点で31.2%と前年比1.6ポイント減りました。ただ、若手社員の転職動向などを研究するリクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)エンジニアの宇野渉さんは「コロナの影響で転職活動を控えただけ。コロナ下で職場に不満を募らせた若手がアフターコロナに一気に動き出す恐れもある」と指摘します。
22歳人口は10年代以降、おおむね毎年120万人台で推移してきました。ところが国の推計によると、今年から減少局面に入り、27年には110万人を割り込みます。「金の卵」である若手の離職は、企業にとって切実な経営課題です。
どうすれば若手社員の帰属意識を高められるか。住友化学は課題図書を媒介に、ユニークな新人研修を20年度に始めました。社長を含む20人の役員が仕事に役立つ書籍を推薦します。新入社員が読後の感想をチャットに書き込むと、役員が返答するという内容です。仕事に必須の知識を身につけるとともに、遠い存在に感じる役員層と直接やりとりすることで、会社への愛着を高めてもらう一石二鳥のプログラムです。
鍵はコミュニケーションです。昨今の若手は自己承認欲求が強いといわれます。宇野さんは評価を具体的に伝えることが重要だと強調します。「仕事ぶりを評価していた期待の若手が前触れなく転職する『びっくり退職』が絶えません。上司の高評価を本人が受け取っていないのです。一つ一つの仕事結果についてどこが良かったのか、同僚や社内でどう評価されているかなどを口頭で話すことが離職予防の第一歩です」