――ポッカサッポロの主要事業はレモンとプランツミルクのほかに、飲料とスープがありますね。こちらの分野については、どうお考えでしょう。

ポッカサッポロが目指しているのは「両利きの経営」です。レモンとプランツミルクは今後、成長が期待できる分野です。一方、飲料とスープに関しては、自分たちが得意とするものにもっと注力していきたい、と考えています。「じっくりコトコト」ブランドのスープは粉末タイプだけでなく、缶入りの液体スープも販売しています。液体の「じっくりコトコト煮込みスープの素(もと)」は水とスープのもとを1対1の割合で鍋に入れ、さらに冷蔵庫の残り野菜をお好みで加え、中火で5~10分煮込めば出来上がりです。追加で残り野菜を加えれば、フードロス問題の解消にもつながります。

液体の「じっくりコトコト煮込みスープの素」はフードロスの解消も狙う

具材を入れ込んだ液体スープは作るのが実は難しく、普通の食品会社はなかなか手がけません。ポッカサッポロが液体スープもラインアップに加えているのは、飲料もやっているからに他なりません。飲料分野で培った製造ノウハウを液体スープに生かしているからできるわけです。自社の知見を掛け合わせてできる新商品をもっと増やしていければ、と思っています。

飲料に関しては「加賀棒ほうじ茶」や「熊本玉露入りお茶」「北海道余市の白ぶどうソーダ」や「宮古島ハイビスカスティー」などご当地に根ざした「TOCHIとCRAFT」シリーズ商品のラインアップの充実化をさらに図っていくつもりです。ビールやジンなどの分野で今、クラフトばやりですが、地域社会にも良いインパクトを与えながら支援する「ソーシャルグッド」の観点で、商品づくりに一層、力を入れていくつもりです。

――ポッカサッポロの経営ビジョンの中にも「おいしい」という言葉があります。社長にとっての「おいしい」と、これから先の食品・飲料会社としての立ち位置についてお聞かせください。

やっぱり、おいしいとは笑顔ではないでしょうか。「おいしいね」と言う時は決まってみんな笑っています。何をおいしいと感じるかは人それぞれでしょうが、その人が何かを食べて、笑顔でいるなら、それはおいしいものに違いありません。さらに加えていえば、その場がいい雰囲気であることもあるかもしれませんね。

心の健康ブランド育成ももっと

食品メーカーは人々の健康に貢献すべきだ、といわれますが、健康には体と心の両方があると思っています。「体」だけでなく「心の健康」にもポッカサッポロはもっと貢献していく必要があると感じます。スープの「じっくりコトコト」ブランドはネーミングも消費者の心に刺さっている、まさに心の健康ブランドではないかと思います。消費者の心に刺さるような商品をいかに開発していくか。この先、それがますます重要になってくる気がします。お祝いの時に使える商品が今、あまりないので、ハレの日にマッチする商品を今後、増やしていきたいですね。元来、こうした分野を担う役割は外食産業だったかもしれません。でもコロナ禍で環境は変わり、食は「外」から「内」へと徐々に入り込んできています。こうした動きにもきちんと対応していかないといけません。

征矢真一(そや・しんいち)
1963年生まれ。千葉県出身。横浜国立大学経営学部卒業後、86年4月、旧サッポロビール(現サッポロホールディングス)に入社。2006年、サッポロビール(新会社)北海道本社・戦略企画部長、09年旧ポッカコーポレーション取締役、12年ポッカサッポロフード&ビバレッジ常務、20年同社社長に就任し現在に至る。趣味は旅行。時刻表検定1級を所持する。

(堀威彦)

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