塩野 菓子などの業界もそういう人多いですね。

大室 でも、仕事で相手にするのって、小売店の怖いバイヤーのおじさんなんですよ。だから子どもの笑顔どころか、おじさんの怒ってる顔しか見てないわけです。

塩野 真逆じゃないですか(笑)。

大室 子どもの喜ぶ顔が見たいなら、玩具から離れて違う業界に目を向けてもいいですよね。同じ業界でも役割によって違うし、自分が思い描いていた仕事内容は一部の職種に限られるかもしれない。Bさんも旅行業界への憧れで入ったと思いますが、もうちょっと自分のやりたいことの抽象度を上げると、違う可能性が見えてくるかもしれません。

危機的状況は最高のケーススタディー

塩野 色々な会社を見てきた私としては、あまり慌てないで、悲観もせず、ゆっくり考えてほしいですね。例えば資格の勉強をするなど、時間を有効に使うのもありですし。

日本企業って、正社員で特に若い方だと、辞めさせられたり仕事がなくなってしまったりという状況になることはほぼないんです。それに、どの会社の営業も今みんな大変ですから。自分だけじゃないんですよ。Zoomや電話での営業に切り替わり、「今までにない形の営業をしろ」と言われて、うまくいかない人はたぶんいま日本に1000万人ぐらいいるんじゃないでしょうか。

大室 業務が急にオンライン化して、会社側の教育環境がまだ整っていないという可能性もありますよね。「給与や環境が不満だから転職したい」というのは甘えじゃないし、この状況なら同情的に見てくれる人事も多いはず。じゃあ損切りして次へ行くか、そのバランスをどう考えるかは難しいですね。みんな転職して急に人手不足になるかもしれない。

塩野 どんな業界でも人数が少ない世代は重宝されるもので。就職氷河期世代でずっと同じ会社に勤めた人が重要な役職に就いていたり、経営危機のときに辞めなかった数人が中核になっていたり、ということもあります。

Bさんが仕切り直したいなら第二新卒としてゼロから再スタート、ということも十分できると思いますが、ここで次を決めずに無職になるのは、おそらくご本人が想像されているより落差があるので、それはあまりお薦めしないです。なので、気長に次を探すというスタンスでもいいですし、その間に感染が収束して旅行需要が戻るかもしれません。

危機的状況は人間観察の場としても最高ですよ。「大変なときに人はこういう風に動くんだな」と思って見ていると、後になってきっと生きてくる場面があると思います。若いときはそういう機会を神様から与えられたんだな、というぐらいに考えて、ゆったり構えてもらいたいですね。

(文・構成 安田亜紀代)

大室正志
産業医科大学産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医や医療法人社団同友会の産業保健部門を経て、独立。現在、大企業からベンチャー、外資、独立行政法人まで30社以上の産業医を担当。著書に『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)など。
塩野誠
経営共創基盤・共同経営者。ゴールドマン・サックス、ベンチャー起業、べイン、ライブドアなどを経て現職。大企業のコンサルティングや北欧・バルト地域でベンチャー投資を行い、フィンランド在住経験がある。著書に『20代のための「キャリア」と「仕事」入門』(講談社)『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)など。