野村萬斎さんの尽きない好奇心とエネルギー
萬斎さんは皆さんご存じのように、俳優として映像に出られたり、演出もされたりと、狂言以外の活動にも積極的に取り組んでおられます。そのバイタリティーの源を聞いたところ、あれもやりたい、これも興味があるという好奇心の強さを知り、尽きないエネルギーを感じました。僕もいろいろなことをやりたいタイプなので、その意欲があるうちはいくらでもやっていいんだと勇気づけられました。そんな萬斎さんでも、三谷幸喜さんや井上ひさしさんの作品に出たときには、現代劇なので狂言の型から離れようとするのだけど、それがなかなかできずに難しさを感じたとおっしゃいました。僕もミュージカル以外のお芝居に挑戦したときに同じような経験をしたので、共感したし刺激も受けました。
梅若さんは人間国宝でいらっしゃるのですが、芸歴70年を重ねた今でも声を保つことに気をつかっておられて、コロナ禍で公演ができなかったときも、毎日声を出して鍛えていらっしゃったそうです。なし得たことを振り返るというよりも現在進行形のお話ばかりで、現役感にあふれておられたのが、とてもすてきでした。上演される演目の祝能「翁 弓矢立合」は、そのものが天下太平や国土安泰を祈祷(きとう)する神事とされていて、正月や舞台開きのほか、お祝い事の催しに演じられるそうです。演者は神の役を演じるので、何日か前から身を清める生活を送るといった、伝統芸能ならではの習慣のお話も初めて知ったので、とても新鮮でした。
5月20日と27日に放送の第3、4回は、パントマイム・アーティスト、が~まるちょばのHIRO-PONさんがゲストです。8月28日に「が~まるちょば LIVE2022 STORIES“PLEASE PLEASE MIME”」が開催されるので、お越しいただきました。昨年の東京オリンピック開会式でのピクトグラムをモチーフにしたパフォーマンスにクリエイターとして参加されるなど、幅広い活躍をされています。そのエピソードも含めて、いろんなお話をうかがったのですが、すごく熱くて、思いがたくさんある方でした。パントマイムというと、見えない壁を手で表現するみたいな印象ですが、じゃあなぜ壁を表現しなきゃいけないのかという役作りのところは、僕たち役者とまったく一緒。言葉を使わないからこそ言葉以上のものを表現できるという気持ちでやっているというお話に感動しました。


ゲストのお話を30分間じっくり聞くという経験は、僕にとっても初めてです。TBSラジオでやっている番組『井上芳雄 by MYSELF』にもゲストが来てくださることがあるのですが、歌も歌うし、そこまで長くお話を聞けません。テレビでMCをしているNHKの音楽番組『はやウタ』も『行列~』も、いろいろな方が来てみんなで話す形なので、1人の方とのトークは初挑戦のスタイル。それも初回から自分のフィールドではないというか、ミュージカル畑ではないゲストの方々で、能や狂言もパントマイムも知らないことのほうが多いので、どうなるかと思いながらのスタートでした。実際に始まってみると、濃いお話が聞けてすごく楽しいし、ジャンルこそ違えど僕も表現する仕事なので、何かしらを極めている方のお話はためになることばかり。予想以上に面白い番組になったと思うし、またひとつ、役者とは違うベクトルの仕事ができつつあると感じています。