日経Gooday

心の苦しさを解決方向に持っていく2つの質問

――「ソリューション・フォーカス」について具体的に教えてください。

篠原さん 一つめは「サバイバル・クエスチョン」です。どんなものかをお伝えするために、カウンセリングなどで用いられている例をお話ししましょう。

何か心の問題を抱えている人が目の前にいます。「それは大変でしたね」とこれまでの苦労に対して共感し、その上で「どうやって乗り越えてきたの?」と質問をするのです。

サバイバル・クエスチョン
「そんな大変な状況をどうやって乗り越えてきたの?」

ひどい状況だったのに、少なくともこの一週間はなんとかやってきた。そこにこそソリューションの芽がある、とする考え方です。

「どうやって乗り越えてきたのか、同じような経験をした人に共有したいので、書き出してもらえませんか」と言うこともあります。

すると、誰かの役に立つ、ということで自己効力感が高まり、プライドもちょっと刺激されて、やってみようかなと思うようになる。それが結局、自分の役に立つのです。

――それは自分自身に問いかけるスタイルでもいいんですよね。

篠原さん もちろんです。よくぞここまで持ちこたえてきたね、と自分に感心しましょう。すると、脳が自己肯定的に働き出します。気持ちが落ち着いてきたら、これまで自分が具体的にやってきたサバイバル・テクニックを羅列します。

2カ月間、あれだけ仕事を抱えていたのに、なんと現在、その仕事はすべて片付いている。振り返れば、優先順位を決めて、まとめられる仕事はひとまとめにした。

「すごいじゃん! その工夫が功を奏したんだね」と、悦に入ってください。がんがん褒めてください。

人間関係で言うなら、あんなモンスター上司なのに、ここまでやってきた。

過大な要求にもなんとか対応したし、同僚に助けを求め、ときには反論だってしてきた。やってきたことを羅列すると、まぎれもなく自分自身がやってきたことに気づき、自分の持つ強さや武器を発見できるのです。

悩みすぎて何日も眠れない、という状態でもなんとか今日まで生きているのはどうしてか。極論ですが、死んじゃいない。生き残った理由は必ず存在する、という考えがもとになっているのが「サバイバル・クエスチョン」です。

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「解決」という理想の状態をイメージする質問とは?