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こじれた人間関係は「この質問」で突破 原因探しはNG

脳科学者に聞く「脳」の活性化術

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

人間関係がいったんこじれると、解決手段は見えなくなる一方だ。「やってしまいがちなのが原因探し。しかし、原因探しをしても悪循環を生むだけ。それよりも、視点を解決方向に向けることこそ大切」と、公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんは言う。人間関係をラクにする「ソリューション・フォーカス」という方法を聞こう。

「原因探し」をしても出来事は変わらない

――「この人、苦手だな、嫌いだな」と思っていても、嫌いを好きにひっくり返すことはできる、というお話を、前回(「苦手な相手の攻略法 『嫌い』を『好き』に変えるワザ」)では伺いました。

一方で、もっと複雑な人間関係もあります。親子関係がこじれたり、すごく傷つけられたり、という経験によって、年をとってもずっとこだわってしまったり、落ち込んだりしてしまうという人もいるはずです。今回は、「こじらせてしまった」というレベルの人間関係をいかに乗り切っていけばよいかについて脳科学の視点から教えてください。

篠原さん 人間関係がこじれるほど、思考もドツボにはまっていく、という現象があると思いませんか? この問題のそもそもの起点はどこにあったのか、あのとき、こうしていればこんなに悪い状況にはならなかったのでは、と考えるほど気持ちは苦しくなっていく――こういった現象を心理療法の世界では「プロブレム・トーク」と言います。

プロブレム・トークを言い換えると、「原因探し」。原因探しを始めると、多くの場合、思考はネガティブ方向にしか回りません。現状が悪い、という前提からさらに悪さの要素を探し、追加していくという思考になってしまうからです。

しかし、実際問題、心の出来事というのはぐちゃぐちゃに絡まった糸のようなもので、最初にどこから絡まり始めたのかがわかっても、簡単には元に戻りません。単純なほつれならそこをほどけばいいけれど、ぐっちゃぐちゃになっている状態で、二次障害、三次障害と、玉突きのように悪化しているから人は悩むのです。

――確かに、人間関係がもつれているとき、「あのときのあの言葉がきっかけだった」とわかっても、状況は変わりませんね。起こった出来事を消しようもないですし。

篠原さん そう。どっちに転がってもネガティブにしか回りません。

一方で、その問題を考えるとき、もう少しいい気分になるにはどうしたらいいんだろうと発想する心理療法の考え方が「ソリューション・フォーカス」というものです。正式には、「ソリューション・フォーカスト・アプローチ」。原因の追及は行わず、未来の解決像を組み立てていくことで、短期間でクライアントに変化が得られる、とされています。

緊張している場面で「緊張くん」や「元気くん」というキャラクターを思い浮かべる、という外在化という手法をこれまでにお伝えしましたが(「脳をダマして緊張を克服 不安を『外在化』する方法」)、それもソリューション・フォーカスのテクニックの一つと見ることもできます。原因なんかわからなくても解決はできることがある。そこを探していきましょうというほうが、問題を軽くしていくために圧倒的に有利です。

心の苦しさを解決方向に持っていく2つの質問

――「ソリューション・フォーカス」について具体的に教えてください。

篠原さん 一つめは「サバイバル・クエスチョン」です。どんなものかをお伝えするために、カウンセリングなどで用いられている例をお話ししましょう。

何か心の問題を抱えている人が目の前にいます。「それは大変でしたね」とこれまでの苦労に対して共感し、その上で「どうやって乗り越えてきたの?」と質問をするのです。

サバイバル・クエスチョン
「そんな大変な状況をどうやって乗り越えてきたの?」

ひどい状況だったのに、少なくともこの一週間はなんとかやってきた。そこにこそソリューションの芽がある、とする考え方です。

「どうやって乗り越えてきたのか、同じような経験をした人に共有したいので、書き出してもらえませんか」と言うこともあります。

すると、誰かの役に立つ、ということで自己効力感が高まり、プライドもちょっと刺激されて、やってみようかなと思うようになる。それが結局、自分の役に立つのです。

――それは自分自身に問いかけるスタイルでもいいんですよね。

篠原さん もちろんです。よくぞここまで持ちこたえてきたね、と自分に感心しましょう。すると、脳が自己肯定的に働き出します。気持ちが落ち着いてきたら、これまで自分が具体的にやってきたサバイバル・テクニックを羅列します。

2カ月間、あれだけ仕事を抱えていたのに、なんと現在、その仕事はすべて片付いている。振り返れば、優先順位を決めて、まとめられる仕事はひとまとめにした。

「すごいじゃん! その工夫が功を奏したんだね」と、悦に入ってください。がんがん褒めてください。

人間関係で言うなら、あんなモンスター上司なのに、ここまでやってきた。

過大な要求にもなんとか対応したし、同僚に助けを求め、ときには反論だってしてきた。やってきたことを羅列すると、まぎれもなく自分自身がやってきたことに気づき、自分の持つ強さや武器を発見できるのです。

悩みすぎて何日も眠れない、という状態でもなんとか今日まで生きているのはどうしてか。極論ですが、死んじゃいない。生き残った理由は必ず存在する、という考えがもとになっているのが「サバイバル・クエスチョン」です。

「解決」という理想の状態をイメージする質問とは?

篠原さん そしてもう一つ、ソリューション・フォーカスで用いられているのが「ミラクル・クエスチョン」という質問です。

いうなれば、未来に向けて想像をする質問をするのです。

もしも奇跡が起こって今晩眠っている間に、あなたの不安や悩みがすべて解決してしまったとします。奇跡は眠っている間に確実に起こっている。

もしもそうなら、あなたは朝起きてから、どの場面で自分に奇跡が起こったことに気がつきますか?

このように、「奇跡が知らないうちに起こった前提」で投げかける質問です。

ミラクル・クエスチョン
「奇跡が起きて、あなたの問題がすべて解決したとします。だとしたら、あなたはその奇跡が起こったことをどんなことから気づきますか?」

――一見すると、非現実的な質問ですね。

篠原さん そうでしょう? でも、あえてこういった質問をします。

問題を抱えた状態だと問題があるのが当たり前になってしまっている。解決すら想像できない状態です。しかし、この質問により、解決した、という理想の状態をイメージすることができます。

奇跡は起こる。その朝について、ビデオ映像のように思い浮かべるのも一つの方法です。

「うーん、よくわからないけど、腰に手を当てて歯磨きしているときに、なんともいえないいい気分が湧いてくるかも」と思い浮かんだら、「とりあえず明日の朝、それをやってみましょう」とアドバイスします。

これを心理学用語で「身体化された認知」と言います。人の脳は独立しているわけではなく、体というインターフェースによって稼働する。体が実際に脳に影響を与えるのです。「うまくいくわけない」とネガティブループをぐるぐる回していた状態から、思考を別の場所に飛ばすことができるわけです。

――サバイバル・クエスチョンも、ミラクル・クエスチョンも、悩んでいるときにはなかなか出てこない発想だからこそ、悩んでいるときは「原因探し」に固執してしまう、ということがよくわかりました。

篠原さん 原因探しのロジックは、多くの人がハマりやすいのです。

 たとえば、新型コロナウイルス感染症で言うと、「新型コロナウイルス」が原因ですね。しかし、感染して重症化し、肺炎になって苦しんでいる人に対して優先されるべきは「肺炎を治す」ことであって、感染源になったウイルスがどこに存在していたのかを追究してもしょうがないですよね。心理的問題においても同じで、原因をいじくってもしょうがない、それよりもソリューションにフォーカスしようよ、というわけです。

理屈重視で生きていると、「原因を押さえれば結果が変わる」という思考モデルで考えがちですが、ソリューション・フォーカスのほうが事態の改善には効果的です。生活習慣病っていろんな原因があるけど、とりあえず運動をすればなんとかなるんじゃね? と、解決に持っていくのがソリューション・フォーカスといえるでしょう。

◇   ◇   ◇

次回は、アイデアに詰まったときに「ひらめきやすい脳」にする方法を聞く。

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。

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