別居婚や仲間と協力…女性研究者、家庭との両立に奮闘

東北大学助教の上妻馨梨さん㊨。学内保育園に通う息子が研究室に立ち寄ることもある(上妻さん提供)
東北大学助教の上妻馨梨さん㊨。学内保育園に通う息子が研究室に立ち寄ることもある(上妻さん提供)

ダイバーシティ(多様性)推進の観点から、近年、教育・研究の場における女性研究者の活躍が期待されている。一方で、安定的なポストの獲得や、家事・育児との両立の難しさも指摘される。彼女らは何に課題を感じ、どんな支援を必要としているのか。研究と家庭生活の両立に奮闘する女性研究者らの日々を追った。

研究と家庭の両立求め、働く場所選ぶ

「研究職は女性にとって働きやすい仕事」。東北大学大学院生命科学研究科助教の上妻馨梨さんはそう言い切る。光合成のメカニズムを解明する研究に従事する上妻さん。研究者を選んだ理由も「教授を目指せば定年まで働き続けられる」と思ったからだ。

だがここまでの道のりは平たんではない。奈良から米ワシントン、広島、そして宮城――。これは上妻さんが、これまでに移り住んできた場所だ。研究と家庭を両立できる環境を追い求めてきた。

上妻助教は光合成に関する研究に従事している(本人提供)

奈良先端科学技術大学院大学でバイオサイエンスの博士号を取得。米ワシントン州立大の任期付き研究者に就いた。渡米して5年目、父親の逝去に伴い、実家に近い広島大学の任期付き特任助教に。「実績があれば柔軟に働く場所を選べるのは研究者ならでは」。上妻さんはそう話す。

帰国後、東北大に勤務する夫と、広島と宮城で別居を始めた。年齢を考え「産むならこのタイミングしかない」と子どもを持つ選択をし、1人で子育てする覚悟を決めた。だが出産直前の2015年1月、東北大が研究職を募集していることを知り、迷わず応募。その後、夫が関東に移ったため、現在は子どもと2人で暮らす。

研究者の女性は増えつつあるが、結婚や出産で壁にぶつかるケースは少なくない。17年に男女共同参画学協会連絡会が公表した調査結果によると、日本では女性研究者の半数が配偶者と別居の経験を持つ。上妻さんは希望のポストを得られてきたが、常勤ポストは狭き門だ。「無意識に公募情報サイトを検索していることもある」(上妻さん)と将来への危機感は強い。

名古屋大学教授の川口由紀さんは、夫が京都大学の研究者のため、中間地点の岐阜県に住み新幹線通勤する。研究者同士で結婚するケースが多い一方、ポストを得るのは大変なため、やむなく遠距離通勤や別居を選ぶ人は少なくないという。研究者の夫婦を一緒に正規雇用する制度を用意する大学もあるが、まだ限られる。川口さんは「大学間で自在に人材を入れ替える制度があればいいのに」と話す。

コロナ下、家事・育児負担の偏りに課題

別居、同居にかかわらず、家事や育児の負担が女性に偏りがちであることも課題だ。特に新型コロナウイルス下でその傾向が浮き彫りになり、男性研究者に比べて女性研究者による論文の割合が、従来よりも減少したとの報告が世界で相次いだ。外出自粛や休校で、家事や育児の負担が増えたためとみられる。

小学生と3歳の子どもを育てる名古屋大学の川口さんも、研究と家事・育児の両立には苦労するという。川口さんは原子や電子の機能をデザインする専門家だ。博士課程に進学後「研究が面白くやめられず」研究者の道を選んだ。

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女性研究者の割合、OECD加盟国で最低水準