読書離れに挑む東大生ベンチャー 筑駒の先生がヒントYondemy 代表取締役・東京大学経済学部4年 笹沼颯太さん

ヨンデミーを創業した笹沼さん=ヨンデミー提供

本よりYouTube(ユーチューブ)に夢中――。子どもの読書離れが深刻になるなか、「AI(人工知能)司書」が子どもの好みや読書力を分析し、思わずハマってしまう本を薦めてくれる読書教育サービスが話題になっている。開発したのは東京大学の現役学生によるスタートアップ、Yondemy (ヨンデミー)だ。代表取締役の笹沼颯太さんが筑波大学付属駒場中・高(筑駒、東京・世田谷)の同級生らと2020年4月に創業し、21年9月には総額1億円の資金調達に成功。なぜ読書という一見地味な分野に目を付けたのか、その軌跡を追った。

起業のきっかけは、家庭教師をする東大生の「あるある」だった。

「先生は小さい頃、どんな本を読んでいましたか?」。笹沼さんをはじめ創業メンバーも周囲の友人も、生徒の親から同じ質問をされるのだ。

「うちの子が国語が苦手なのは、本を読まないからだと思うんです……」「塾の先生から本を読みなさいと言われたけど、どんな本がいいのかわからない」。こうした悩みを聞く中で、子どもの読書を応援するサービスにニーズがあると考えた。

AI司書と会話しながらレッスンが進んでいく=ヨンデミー提供

「ヨンデミーオンライン」(月額2980円、対象年齢5〜15歳)は興味関心や読解力のレベルに合わせてカスタマイズしたお薦めを「AI司書」が冊数無制限で提示するオンラインサービスだ。世の中には様々な推薦図書や図書館のブックリストがあるが、笹沼さんによれば、それらは「大人が読んでほしい願望リスト」であって、子どもが読みたい本との間にはギャップがあるという。さらに、読む力はそれまでの読書経験によって一人ひとり違うため、「何歳から」などの表示があっても、実際にはレベルが合っていない可能性もある。

笹沼さんは、読書が苦手な子どもは自分にぴったりの本に出合えていないか、読むコツを知らないだけ、という確信があった。なぜなら筑駒時代に受けた2つの授業で自分の好みと読む楽しさを知ったからだ。

「読書は自由なものだ」 筑駒教諭の教え

1つ目は中3と高1の時に受けた「リーディングワークショップ」の授業だ。リーディングワークショップは欧米で広がっている読書教育の手法で、担当していた澤田英輔教諭は日本における先駆者の一人だった。授業は5〜10分のミニレッスンでスタート。自分にぴったり合う本の見つけ方や、簡単なジャンル紹介などを聞いた上で、生徒は自由に本を選び、読書にひたる。

筑駒の図書館には畳のスペースがあり、そこに寝っ転がって読むのもOK。リラックスした雰囲気の中、澤田教諭は生徒の間を回って一人ひとりに「どんな話?」「共感するところはある?」などと話しかけ、それぞれの読書傾向や読みのレベルを把握し、細かく記録をつけていた。次に読む本を迷っている生徒がいれば、「そのジャンルに興味があるならこういう本もあるよ」と薦めてくれることも。「面白くないと思えば、読むのをやめてもっと好きな本を探せばいい。同じ本を読んでも読む人の経験や知識によって100人いれば100通りの解釈がある。そこに正解や不正解はない。読書は自由なものなのだ」と教わった。

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