富士麺ず工房がつくる生パスタ「ハタフレスカ」の「キタッラ2.1」(左、200g)と「タリオリーニe」(100g)。同社オンラインショップにて、いずれも参考小売価格313円で販売

さて、生パスタを自分で練るのはハードルが高いと思う方のために、日本国内でつくられているお勧め生パスタを小池シェフにきいてみた。

岡山市の「富士麺ず工房」は老舗の中華麺製造所だが、創業者家族の名字にちなむ「ハタフレスカ」というブランドの生パスタを製造、販売する。同社にオリジナルの麺を注文するイタリア料理店も増えてきた。

手打ち生パスタの加水率はふつう40%前後だが、「ハタフレスカ」は30%の低加水により生地がだれない。また、パスタをつくる機械が押し出し式だと、圧力と熱でデンプンが糊(のり)状になってネチネチするが、中華麺に使う幅30センチのロール式で圧力をかけ伸ばしたパスタは、茹でてからフライパンでソースと合わせるときにデンプンがほどよく溶け出すという。

富士麺ず工房の「キタッラ」を使った「サルシッチャとブロッコリーのキタッラ」(料理提供 オステリア・デッロ・スクード)

小麦粉は、イタリア料理店数店舗を展開するサローネ・グループと日清製粉が共同開発した生パスタ専用小麦粉「ファリーナ・ダ・サローネ」を使う。一部カナダ産の硬質小麦粉に軟質小麦粉を配合した粉で、オリーブオイルはイタリア産、卵は国産、塩は岡山県産。水はアルカリイオン水を採用した。現在、オンラインでも販売する生パスタは、「キタッラ」と細めの「タリオリーニ」の2種類である。

このキタッラとタリオリーニを使って家庭でかんたんにつくれるメニューを小池シェフに教えていただいた。

富士麺ず工房の「タリオリーニ」を使った「タリオリーニ マーレ・エ・モンティ」(料理提供 オステリア・デッロ・スクード)

「サルシッチャ(ソーセージ)とブロッコリーのキタッラ」は、あらかじめ塩、コショウ、ニンニクみじん切り、フェンネルシードなどスパイスを混ぜて時間をおいた豚ひき肉をフライパンで焼き、パスタと同じ鍋で茹(ゆ)でたブロッコリーとともにあえる。

海(マーレ)と山(モンテ)のものを具にしたのが、「タリオリーニ マーレ・エ・モンティ」。ニンニクの風味を移したオリーブオイルでキノコ数種と魚介類を炒め、切ったミニトマトを加え、茹でたパスタとあえるだけ。

イタリアの生パスタは地方の粉と特産物、風土と歴史のあらわれ。だとしたら、イタリアンに精通したシェフが津々浦々にいる日本も、地方ならではの生パスタメニューがどんどん生まれていくにちがいない。

(イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子)

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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