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ウド・フキ・エゾジカで伊料理 アマンが大手町で挑戦

イタリア美味の裏側(15)イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

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NIKKEI STYLE

海外からの日本入国制限が少しずつ緩和されるなか、かつて外国人でにぎわっていたレストランが再び積極展開に踏み出した。その1つ、世界的なリゾートホテルチェーン「アマン」で唯一の都市型ホテル、アマン東京(東京・千代田)のイタリアンレストランの料理が見逃せない。

アマン東京は2014年に開業し、メインダイニングは欧州料理を幅広く扱うレストランだった。が、アマンがグループ全体として、「アルヴァ(英語の「収穫」の語源となったラテン語)」というイタリアンレストランをスタートさせたことをきっかけに、2018年1月、アマン東京でも「アルヴァ」に生まれ変わった。イタリアのサステナブルな食文化と地産地消をとり入れ、日本の豊かな食材を使っている点で、ホテルの宿泊客だけでなく、レストランを目当てに訪れる顧客も多い。

当レストラン「アルヴァ」の平木正和料理長は17年間のイタリア滞在歴があり、ヴェネツィアの五つ星ホテル、ザ・バウアーホテルで総料理長を務めたこともある。平木料理長は、日本の食材を使いながら、イタリア郷土料理として巧みにまとめ上げる。規模の大小にかかわらずイタリア各地の厨房に入り、郷土料理のベースがしっかりと身についているので、現地で食べ慣れた日本人や外国人にもイタリア料理として違和感なく、かつ新しい味を提示できるのだ。

ローマの東側の中部イタリアに、アブルッツォという標高3000メートル近い山にも海にも恵まれた州がある。コストパフォーマンスのよいアブルッツォのワインが日本でも話題になりつつある今、日本の食材を組み入れた同州の郷土料理コースを特別にいただいた。いくつかは、「アルヴァ」のふだんのコース料理やアラカルト料理に入っている。また、約2000本のワインセラーは、アブルッツォ産の3種類のワインを含めて、約4割をイタリアワインが占めている。

最初の前菜は「ニシンと山菜のヴァリアツィオーニ(バリエーション)」。ニシンをオリーブオイル漬け、酢漬け、薫製という3種類の調理法で仕立てた一皿だ。山菜はウド、ウルイ、フキで、フキは古代ローマ時代から味つけとしてある甘酢味にした。イタリアでもニシンは食べられ、平木料理長が滞在した北イタリアでも春になると野草を摘んで料理に使うことから、「日本の春をイタリア料理で表現した」一品である。

日本の和食材でイタリアの郷土料理を表現

次の前菜は「ホウボウと桜海老のブロデット」。イタリア半島の東側、アドリア海に面した町で食べられる魚介のスープがブロデットだ。黄色い泡はサフランで、イタリアのサフラン料理といえばコメ料理「ミラノ風リゾット」を思い浮かべる方が多いだろう。アブルッツォはそのサフランの産地の1つなので、ブロデットにも使う。まるで魚介のエキスのように濃厚なブロデットに、サフラン入りブロード(だし)の泡が色も風味も華やかさを添える。

3つ目の前菜は「アスパラガスと有精卵、ペコリーノ」。アブルッツォには、「カーチョ・エ・ウオーヴァ(チーズと卵)」というペコリーノ(羊のチーズ)と溶き卵を使った郷土料理がある。アブルッツォは牛乳製のチーズよりも羊乳製のチーズが主流だ。その郷土料理からイメージした一品で、平木料理長が勤務していた北イタリアではアスパラガスをよく使い、ゆで卵や半熟卵をソース代わりにすることから、これらの食材を組み合わせた。

パスタは「北海道産オーガニック全粒粉のスパゲッティ アッラ・キタッラ 蝦夷鹿のラグーとアイヌネギ」。「実は、北イタリアの山のほうにも、春に行者ニンニク(アイヌネギ)に似た食材が出てきます。日本の食材をまずイタリアの食材なら何だろうと置き換えて考え、イタリアの郷土料理のベースから外れないように組み立てる。自分にできるやり方はこれしかないし、それが新しい挑戦になると思っています」と平木料理長はいう。

「アルヴァ」のふだんのメニューではタリアテッレという平打ち麺で出されているが、この日はアブルッツォの伝統手打ちパスタ、キタッラで出された。イタリア語でギターという意味のキタッラは、木枠にギターの弦のように張られた細い針金にパスタ生地を押しつけてつくる。ロングパスタの断面は、スパゲティなら円形、リングイネなら楕円形だが、キタッラは四角形という特徴があり、ラグー(ミートソース)などに合わせやすい。

デザートはホテル内のパティスリーショップでお試しも

メインは「スプリングラムのアッロースト(グリル)」に、バラの花に見立てた新ジャガイモ、アブルッツォ産の黒オリーブなどを添えた。イタリアの中部から南部は、牛肉よりも豚肉や羊肉をよく食べる食文化が残っている。そして、春といえば、復活祭に食べるラム肉。そうした食文化を反映したメニューである。

最後のデザートは、パロッツォというアーモンドとチョコレートのケーキ。イタリアの伝統菓子は数百年の歴史を持つものも多いが、この菓子は100年ほど前にアブルッツォの有名菓子店がつくったとされる。本来は冷ましてから食べるが、この日は温かいままで出すことによって、近くに添えたバニラのジェラートがオレンジのソースに溶け出して、ソースに別の味わいを出すよう考えられていた。

実は、アマン東京の地下2階には、アマングループ初のペストリーショップ「ラ・パティスリー by アマン東京」がある。「アルヴァ」と「ラ・パティスリー」を含めたホテル全体のペストリーをつくるのは、ホテルのペストリー職人たちだ。ショップの商品はプチガトーなら500円から、パンなら300円からとなっている。アマン東京の菓子やペストリーのレベルを知りたい方は、まずここで買って試してみるのもいいだろう。

新型コロナウイルス禍以前、アマン東京は約8割を海外からの顧客が占めていた。世界中の顧客が訪れる有名リゾートホテルだからこそ、誰にでも知られ、誰でも食べられるイタリアンのメニューも置いている。「トマトとモッツァレッラ」「カラスミのスパゲッティ」などがそうだ。平木料理長が若いころのイタリアでの修業先は、家族的なトラットリア(庶民的な料理店)も多かった。「だから、ホテルといえども、温かく親しみやすい雰囲気を出したいんです。ホテルだから、ではなく、ホテルだけど、と言われる料理とサービスを提供したい」(平木料理長)

世界に名だたる「東京」というグルメ都市の、有名ブランドリゾートホテルだからこその挑戦と試行錯誤が続く。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』

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