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薬草の食前酒と食後酒 日本のイタリア料理店でもぜひ

イタリア美味の裏側(16)イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

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NIKKEI STYLE

日本のイタリア料理店でもっと根付いてよいのではと思うものに、食前酒と食後酒がある。プロセッコなどの発泡性ワインは食前酒としても定着しつつあるが、イタリア料理の食後酒となると、グラッパ(ブドウの搾りかすを原料とする蒸留酒)ぐらいしか知られていないようである。今回は、薬草であるハーブやスパイスが使われたイタリアの食前酒・食後酒をご紹介しよう。

「食前酒といえば昔から『カンパリ』が知られていますが、うちはベルモットを置いています」と語るのは、「ヴィネリアヒラノ(vineria HIRANO)」(東京・渋谷)の店主、平野浩文さん。平野さんは1980年代、オープンキッチンを一躍ブームにした東京・原宿の「バスタパスタ」で、山田宏巳シェフらとともにサービスマンとして働いた。その後、別のイタリア料理店の開店に携わった後、原宿で12年間、ワインバーを経営。イタリアワイン専門ワインバーの先駆けとなった。

現在の「ヴィネリアヒラノ」は、1日1組予約限定でイタリア料理を作り、それに合わせたイタリアワインを出す。手作りのデザートと、デザートワインや食前・食後酒だけでも楽しめる。予算は料理のコースが8800円(サービス料10%別)からで、それに酒代がかかる。新型コロナウイルス禍以降は、ワインとの相性を考えた食材・総菜も販売する。

ワインについては、抜栓後、今では当たり前になった酸化防止のバキューム(真空化)の道具を使わない。抜栓後はボトルにコルクをして、ワインの自然の変化を楽しみながら数日間で飲みきるスタイルを貫く。ソムリエの資格はもたず、イタリアワインを料理や食べ物と合わせて楽しんできた自負が平野さんにそうさせている。希少ワインを抜栓するときは、SNS(交流サイト)などで告知して客を募る。

食前酒に飲むことが多いベルモットは、18世紀後半に北部のトリノで製造が始められた。ベルモットはワインをベースに、ハーブやスパイスをスピリッツ(蒸留酒)に浸漬(しんし)したエッセンスを混ぜ、砂糖や水を加えたものだ。

「ヴィネリアヒラノ」に置いてあるベルモットは2種類。1つはガンチアのベルモット・ロッソ(赤)で、ガンチアは創設から170年を超える老舗だ。ニガヨモギやオレンジの皮、シナモン、ビャクダン、クローブ、ナツメグ、キナの皮などを使っている。平野さんの店にあるのは60~70年代に流通していたベルモット・ロッソで、加糖のため劣化は少なく、古酒ならではのエレガントで繊細な香りがある。

ヨモギが入ったサルデーニャ島「ベルモット・ロッソ」

もう1つは、イタリア半島西に浮かぶサルデーニャ島のシルヴィオ・カルタ社の「ベルモット・ロッソ」。同社は50年代設立の新しい蒸留所だ。第2次世界大戦中に国から農産物やワインの供出を求められたサルデーニャ島民は、ワインを樽(たる)ごとやぶの中に隠すことがあった。そのとき、やぶに咲いていたムギワラギクの香りがワインについたことから、ベルモットの製造を思いついたという。サルデーニャのブドウ品種、ヴェルナッチャのワインをベースに、ヨモギやセージ、タイムなどのハーブやスパイスを使う。日本でも生薬として使われるヨモギは血行促進作用があり、セージやタイムは強壮と殺菌の働きがあるとされる。食前にベルモットを飲むというのにも、納得がいく。

イタリア語で「アペリティーヴォ」と呼ばれる食前酒は、その語源が後期ラテン語であるところから、古代ローマ時代のハチミツ入り風味付けワインが始まりと考えられる。また、古代ギリシャの植民地があった南イタリアの食前酒には、ギリシャの医師ヒポクラテスの影響があったかもしれない。ヒポクラテスは、白ワインにニガヨモギやハナハッカなどを漬けた苦味の食前酒によって、患者に食欲を起こさせたとされる。18世紀後半に作られたベルモットも考え方は同じだ。

さて、イタリア料理を思いきり味わったあと、消化を助ける食後酒はどういうものがあるだろう。こちらは、ブドウの蒸留酒にハーブやスパイスを浸漬させて糖分を足したリキュールが多い。

「『ヴィンサント』などのデザートワインと混同されがちですが、デザートワインはあくまでデザートとともに楽しむワインで食中酒。食後酒ではありません。最も種類が多く、グラッパに次ぐ人気の食後酒はアマーロ。イタリアの北から南まで、ご当地アマーロがたくさんあるんですよ」と、平野さんはテーブルの上に産地や味の異なるアマーロをずらりと並べてくれた。浸漬する材料にその土地の産品が加えられていくため、アマーロのなかには、ルーコラや野生のフェンネル、カルドンのエキスなどが加えられたものもあるという。

平野さんのお勧めは2つある。1つは、イタリア北西部のアルプスの麓にあるラ・ヴァルドタイネ社の「アマーロ デンテ・ディ・レオーネ」。デンテ・ディ・レオーネとは、タンポポのこと。その名のとおり、タンポポのほか、リンドウ、ニガハッカ、セイヨウノコギリソウ、ニワトコの花、チョウセンアザミ、アンジェリカの根、タイム、セージ、マジョラム、アニスなど、提携農園で栽培したハーブを使う。

蒸留に利用するのは、標高1400メートルの水源の水。こちらのアマーロは苦味と甘みのバランスがとれ、アマーロ初心者にも飲みやすい。ヨーロッパの伝承医学でもアジアの伝統医学でも、タンポポは利尿の働きがあるとされている。

蒸留所が王妃にささげた「アマーロ・モンテネグロ」

もう1つのアマーロは、「アマーロ・モンテネグロ」。モンテネグロ社は1885年から製造するこのアマーロを当初、「長寿のリキュール」と名付けた。製造開始後まもなく、イタリア国王がモンテネグロの王女と結婚した際、これを新王妃にささげることで現在の名前に変えた。創業者は製法を書き残して金庫に保管し、140年近くたったいまも創業当時の製法が守られている。

浸漬されるのは、オレンジやコリアンダー・シード、マジョラム、オレガノ、ヨモギ4種といったハーブ40種類、シナモン、クローブ、ナツメグなどのスパイス、果皮、樹皮、木の根など。まさに日本の「養命酒」に似ている。「アマーロは食前酒としても飲まれます。キナの皮を漬けたベルモットは、チョコレートと合わせて食後酒として飲むのもお勧めです」と平野さん。

日本の養命酒は第2類医薬品に分類される薬用酒だが、イタリアのこれらの食前酒・食後酒はあくまでも酒精強化ワインやリキュール。「ヴィネリアヒラノ」では一杯990円からある。その分、自由自在に、食事の最初から最後まで、イタリアらしく恍惚となって楽しむことができるのだ。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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