蒸留所が王妃にささげた「アマーロ・モンテネグロ」

「アマーロ デンテ・ディ・レオーネ」(左)と「アマーロ・モンテネグロ」(右)

もう1つのアマーロは、「アマーロ・モンテネグロ」。モンテネグロ社は1885年から製造するこのアマーロを当初、「長寿のリキュール」と名付けた。製造開始後まもなく、イタリア国王がモンテネグロの王女と結婚した際、これを新王妃にささげることで現在の名前に変えた。創業者は製法を書き残して金庫に保管し、140年近くたったいまも創業当時の製法が守られている。

浸漬されるのは、オレンジやコリアンダー・シード、マジョラム、オレガノ、ヨモギ4種といったハーブ40種類、シナモン、クローブ、ナツメグなどのスパイス、果皮、樹皮、木の根など。まさに日本の「養命酒」に似ている。「アマーロは食前酒としても飲まれます。キナの皮を漬けたベルモットは、チョコレートと合わせて食後酒として飲むのもお勧めです」と平野さん。

キナの皮を浸漬したベルモットを持つ平野さん

日本の養命酒は第2類医薬品に分類される薬用酒だが、イタリアのこれらの食前酒・食後酒はあくまでも酒精強化ワインやリキュール。「ヴィネリアヒラノ」では一杯990円からある。その分、自由自在に、食事の最初から最後まで、イタリアらしく恍惚となって楽しむことができるのだ。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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