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システムやソフトウエア開発の現場で、「アジャイル」と呼ばれる手法が広がっている。従来の「ウォーターフォール(滝)」型の開発は、要件定義から設計、実装、テスト、リリースといった一連の工程が滝のように上から順番に進む。一方のアジャイルは、小さなゴールを設定し、2〜3週間から2〜3カ月といった短い間隔で、レビューも含む一連のサイクルを何度も繰り返し、最終的なゴールに向かっていく。サイクルが短いために軌道修正がしやすく、ソフトウエアの要件の変更などに対応しやすいというメリットがある。

アジャイル開発を実践する手法の一つが「スクラム」だ。ラグビーのスクラムが語源で、チームの中でがっちりと協力し、ゴールと自分たちの現状を見比べ、最短ルートでゴールにたどり着くように進んでいくイメージだ。

スクラムの認知度は高まってきており、興味を持つ人も少なくないだろう。しかし、具体的にどんな手法なのか、どんなメリットがあり、実践には何から取り掛かればいいのかといった知識を体系的に学ぶ機会は少ない。

そこで、まずは書籍から知識を仕入れることをお勧めしたい。本書『小さな会社のスクラム実践講座』は、スクラムの基本、メリットや実践方法、さらに導入事例などを具体的にあげて紹介する。初めて学ぶ人から導入段階の人まで、幅広く役立てられるはずだ。著者の柏岡秀男氏は、アリウープ(東京・港)の代表取締役としてWebアプリケーションの開発、スクラム導入やアジャイルコーチなどを行っている。

チーム内のフラットな関係

スクラムとは、一言でいえば開発の効率を上げるためのフレームワークで、チームで実行する。基礎知識は、スクラム考案者2人がまとめ、本書でも引用される「スクラムガイド」で学ぶことができる。2023年2月現在、インターネットで検索すると日本語版にもすぐにたどりつけるので、用語の定義などをさらっておくと本書も飲み込みやすいだろう。

スクラムチームは通常、「開発者」複数人、プロダクトの価値の最大化を目指す「プロダクトオーナー」とスクラムチームを支援する「スクラムマスター」各1人、合わせて4〜6人程度で構成される。ポイントは、開発者、プロダクトオーナー、スクラムマスターに上下はなく、フラットな関係であることだ。従来型の開発をしてきた組織がスクラムを導入しようとする場合、この関係を感覚的に理解し、互いに尊重できるチームをつくることがポイントになりそうだ。

本書では、スクラムガイドに沿い、図やチャートも用いながら具体的な進め方が解説される。スクラムは、5つのイベントで構成される。まずは、1〜4週間程度の決まった長さに設定された「スプリント」と呼ばれるサイクルだ。スプリントの中で、その他の4つのイベントを行っていく。スプリントごとのゴールを定めるミーティング「スプリントプランニング」。毎朝の15分程度のミーティング「デイリースクラム」。ここでは前日の作業、当日の作業、さらに問題点などを共有する。さらに、スプリント終盤にステークホルダーも参加して行う「スプリントレビュー」。これは単なる進捗報告会ではなく、ステークホルダーと共にプロダクトの方向性を定める場として機能する。最後が、スプリント全体のふりかえり「スプリントレトロスペクティブ」で、問題点や改善すべき点などを自由に話し合う。

基本的な考え方や手順の詳細を読み進めていくと、スクラムをまったく知らない人でも、全体のおおよそのイメージがつかめるはずだ。

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