検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

元気を取り戻すイタリアン 薬膳で身も心もぽかぽかに

イタリア美味の裏側(11) イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスが世界に広がってから、多くの人が大なり小なり、健康のことを考えて食事をするようになったのではないだろうか。イタリア語で中級から高級な料理店を指す「リストランテ(=レストラン)」の語源は、「リストラーレ(=元気を取り戻させる)」という言葉にある。忘年会や新年会は、リストランテで食事をする方も多いだろう。そんなとき、胃腸に負担をかけず「元気を取り戻させる」ような料理が出てくれば、身も心もうれしくなるに違いない。

イタリア外務・国際協力省が世界でくり広げる「世界イタリア料理週間 2021」(11月第4週)中に、国際薬膳師でもあるわたしが京都と東京のイタリアン2店でオーガナイズした「薬膳イタリア料理のファイン・ダイニング(食事会)」のメニューは、まさに薬膳によって元気を取り戻してもらうのが目的。実際の料理をご覧いただきながら、薬膳の考え方もご紹介したい。

1軒目は、京都市中京区のLUDENS(ルーデンス)。田淵章仁オーナーシェフは、2017年から薬膳を学んで資格をとり、コロナ禍より前から、薬膳の考え方をとり入れたメニューを出している。今の場所に移転する前の旧店名「Clementia(クレメンティア)」時代に、手ごろな値段で良質な食事を楽しめるミシュランのビブグルマンを獲得したこともある。

まずは、田淵シェフの看板料理ともいえる「薬膳スープ」。この日のスープはイタリアのキノコ「ポルチーニ」と鶏のブロード(出し)、朝鮮人参、ナツメ、ショウガ、白キクラゲなどを8時間ほど煮出したもの。薬膳の歴史では、料理人がつくったスープが煎じ薬の始まりともいわれる。体に気や血や水分を補うなど、それぞれに働きをもつ食材の栄養成分が体に入っていきやすいスープは薬膳ではとても大切なメニューである。

今回のスープはクリスマスの時期にイタリア中部で食べる「トルテッリ(―ニ)・イン・ブロード(トルテッリ入りスープ)」のスタイルで出された。詰め物パスタ「トルテッリ」の中身は京野菜のえび芋で、里芋の仲間なので、薬膳ではたんをなくす働きがあるとされる。

スープ、前菜のあとは 「大原野菜のサラダ」。シェフがみずから「音吹(おとふく)畑」という京都市内の無農薬・無化学肥料の畑で現物を見て買い付けを決めた野菜は、新鮮で滋味深い。薬膳で消化をよくするとされるカブや、気を補う安納芋(サツマイモ)などを、オリーブオイルと塩こうじ、マスタードの白いソース、白ゴマとウイキョウの緑のソース、黒ニンニクと豆乳、炭、オリーブオイルの黒いソースでいただく。薬膳で大切とされる「五色」と「五味」の考え方をとり入れたソースだ。

「食材の生産者・飼育者を必ず自分たちで訪ねて、話をするようにしています。現地でしか拾えない声があるから」と田淵シェフは言う。そうして、おいしいだけでなく、環境に優しい、滋養になる食材を選びぬく。生産者を訪ねれば、食材の扱いもそれだけ丁寧になり、感謝がこもる。

自身の出身地である滋賀県の食材も、愛着をもって扱う。無農薬・無肥料栽培のバラ農園「Rose Farm KEIJI」(滋賀県守山市)のWABARA(和バラ)を、今回は花びらパウダーにしてコリアンダー、陳皮(何年もかけて乾燥させたミカンの皮)と混ぜ、カボチャと和えた。薬膳では、バラには気を巡らす働きがある。

メイン料理のひとつは、美味なカモとして知られるようになってきた「七谷鴨(ななたにかも)の薪(まき)焼き バニェットロッソ」。カモは薬膳では体を冷やす食材だが、体を温める食材と冷やす食材の両方をバランスよくとって、精気をたくわえるのが冬の食養生法だ。バニェットロッソは、本来はイタリア北部の「ボッリート(ゆで肉)」に添える、香味野菜と唐辛子などを合わせたソースである。

「七谷鴨」は、京都府亀岡市の養鶏場「弥栄(いやさか)」の自社ブランドのアイガモ。市内を流れる七谷川の近くで、1平方メートルあたり5羽以下で平飼いにし、抗生物質や抗菌剤を使わない配合飼料とミネラル水で育てる。「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の点でもすぐれた、料理人注目の鴨である。

嗅覚の原始的なよろこびに訴えかける薪焼きという料理法は、いまでこそはやりのようになっているが、「滋賀県の実家にむかし、竈(かまど)があったことから、旧店舗『Clementia』時代の16年から薪焼きを手がけています」と田淵シェフは言う。そこには故郷への思いもこもっている。

2軒目は「リストラーレ」という言葉と旬の食材を意識することで、自然と薬膳の考え方がとり入れられていたイタリア料理店、「il Pregio」(イルプレージョ、東京都渋谷区)。ミシュラン一つ星獲得暦があり、フランスのグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」に近年も掲載されつづけている。

コースのはじめの一皿には、トウモロコシの粉を練ったポレンタのチップス、熟成ジャガイモとアンチョビ、ホタテチップス、エビのテーゴレ(薄焼き)がのる。エビのテーゴレは、桜海老のリゾットを作ってペーストにし、乾燥させて焼くという手間のかけようだ。そしてスープは岩坪滋オーナーシェフの看板料理のひとつ、「ブロード・ディ・プロシュット(生ハムのだしのスープ)」。生ハムのほか、干しシイタケ、昆布、ネギなどが出しに使われている。うま味を出しきった生ハムは、まかないでパテにしたり、二番出しにしたりと、フードロス対策もきちんと考えられている。

リアルな脚の形を見た客が少しざわめいた圧巻のメインは、「ハトのロースト サルサ・ペヴェラーダ」。ハトは日本人にはなじみのない食材だが、北部・中部イタリアではよく食べられる。薬膳では、冬にとるべき「鹹味(かんみ)=塩味」をもつとされ、冬に養うべき「腎(臓)」に働く理想的な肉のひとつである。

「ハトの骨からだしをとり、内臓はソースに加え、胸肉ともも肉と脚肉を食べるこの料理は、薬膳の考え方である『一物(いちぶつ)全体(=食材を丸ごと食べること)』であると、今回、気がつきました。ふだんからこのことは心がけていましたが、これは命を(感謝して)いただくことでもあります」と岩坪シェフは言う。

「サルサ・ペヴェラーダ」とは、シェフの修業先のひとつ、イタリア北部ヴェネト州のソースで、今回は「オリエンターレ(東方の)」と名づけて、サンショウの一種の「ティムール」、中東で使われるウルシ科植物の実「スマック」に、「陳皮」という薬膳素材を加えた。

ドルチェ(デザート)は、「四万十栗のネッチとマスカルポーネ リクイリーツィアのジェラート」。ネッチはイタリア産栗粉100%に牛乳とラードを加えてクレープ風に焼き、香りが独特で甘さもある四万十の栗をはさんだ。マスカルポーネはフレッシュチーズ。イタリアでは苦いアメで有名な「リクイリーツィア」こと、薬膳で使う「甘草(かんぞう)」のジェラートは、爽やかさを感じさせた。

それぞれの店で7~8皿の料理を食べても、食後はまったくもたれることなく、翌朝は体がポカポカとしていた。薬膳につながるリストランテでのイタリア料理は、家庭の薬膳ではまず考えられないような手間がかけられていて、心ごと温められる。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_