日本の看護師120万人のうちNP670人

一方の日本。医師法により原則、診断・診療などの医療行為を担うのは医師に限られている。しかし、医師不足が深刻化するなか、高度なスキルを身につけた看護師には診療補助の特定行為が認められてきた。2008年に看護系の一部大学院にNPコースが設けられた。ただ、現在も国家資格ではなく、日本NP教育大学院協議会の資格認定にとどまっている。

全国の病院を回り、NPの普及・育成にあたる筑井さん

国内で就業している看護師は約120万人と言われるが、NP資格を有するのはわずか670人だ。その第1期生が筑井さん。NPとなって7年間で実に17カ所の病院を回った。北海道から沖縄まで全国の病院で、NPの普及・育成活動に従事してきた。どんなキャリアを歩んできたのか。

「子供の頃からひどいぜんそくで、病院での入退院を繰り返してきた」と看護師を志望。東京医科大学で看護師の資格を取得し、3年余り西新宿の大学病院で働いた。その後オーストラリアやカナダで暮らした。「外国で生活し働いてみたかった」という。この頃、NPの存在を知ったが、日本では無縁の制度だと思っていた。

しかし、日本に戻り、国際的な看護師の学会に参加した時に「こんなアカデミックな看護師もいるのか」と目が覚める思いに駆られた。看護師の勉強を本格的にやり直そうと考え、千葉大学看護学部に編入学した。国公立大学で独立した唯一の看護学部として誕生したエリート看護師の養成機関だ。さらに大学院に進もうと考えていた時、日本にも看護系大学院にNPコースが設置されることを知った。

リスキリングを開始、医学に触れる

筑井さんは、本格的なリスキリング(学び直し)を決意し、都内で唯一NPコースを設けた東京医療保健大学大学院に進んだ。「ここで初めて本格的に医学教育に触れた。多くの医師から臨床推論などを学んだ」という。さらに病態生理学や薬理学、身体所見の取り方や人工呼吸器などを扱う高度なスキルや知識を次々吸収した。

医師と看護師は視点や役割が全く異なる。いくらベテランの看護師でも、あくまでも医師の指示に従い、アシスタントに徹するのがナースだ。では、筑井さんはNPとして実際にどんな仕事をしているのか。

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家族や地域の事情も配慮、患者と医師を仲介