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コロナ禍で医療従事者、とりわけ「医師」に注目が集まっている。大学の医学部志望者が日米でそれぞれ増加したという報道もある。そんな中、変わりゆく職業としての医師の実像をリアルに描いたのが『それでも君は医者になるのか』(日経BP)だ。書いたのは現役の外科医で小説家でもある中山祐次郎氏。医師は本当に尊い職業なのか、やりがいはあるのか、過重労働などの問題は解決されるのか……。本書の読みどころを紹介する。

緊急手術が2倍に! 外科でも大きかったコロナの影響

中山氏は大腸を専門とする外科医だ。新型コロナウイルス感染症の患者を直接診療することはなかったものの、その影響は決して小さくなかった。2021年初めに2回目の緊急事態宣言が出ていたころ、中山氏が当時勤めていた病院のある福島県郡山市で最も大きい病院では、150人以上のクラスター感染が発生した。そのため、重症の患者が中山氏の病院に押し寄せ、緊急手術の数が一気に2倍になった。それまで夜7時には帰れていたのが、夜9時になっても手術が終わらない生活になり、深夜に手術を行うこともあったという。

実際に新型コロナ患者を治療していた医師の証言も本書には収められている。近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医である倉原優氏は、中山氏から「大阪のコロナ臨床の現場の様子」について問われると、2021年3~5月の大阪での第4波は「ただただ地獄だった」と答えている。

「地獄」とはどのような状況だったかというと、軽症中等症用の病院にいる患者の容体が悪化しても、医療ひっ迫のため重症用の病院で引き取れなくなってしまい、設備や体制が不十分な軽症中等症用の病床で診なければならなかったということだ。また、人工呼吸器の台数が限られるため、これ以上ひっ迫が進むと「患者の選別」を行わなければならない可能性もあったという。

著者の中山祐次郎氏

著者の中山祐次郎氏

患者の死に落ち込む 医者だって人の死に慣れない

新型コロナに限らず、医師にとって「患者の死」は日常の一部だ。しかし、中山氏は「医者だって人の死には慣れない」と本音を告白する。

それまで親しく話していた患者が亡くなれば何日も落ち込んでしまう。同僚からは「それじゃもたないから、患者さんとはもうちょっと距離を置いたほうがいいのでは」と言われたものの、やはり自分はその都度落ち込んでもかまわないから、このままのスタイルでいこうと思ったそうだ。

そのほか、若くして闘病の末、がんで亡くなった知人や、研修医のころにお世話になった恩師の死が本書には登場する。それに対する、医師として、人間としての葛藤も描かれている。

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