2023/1/26

日本には服装を取り締まる風紀警察はいないが、着たいものを着る自由があるとは言い難い。学校では髪形や服装について細かい規定があり、男女に別々のルールが課される。私が通った米国の高校では外見についての校則が全くなかったが、海外では珍しいことではない。現在息子たちが通うフィリピンの学校でも自由度が高く、トランスジェンダーの中学生が堂々と好きな格好をしている。

日本での就職活動や職場にも、女性特有の服装規定がある。一定の高さがあるパンプスやストッキングの着用義務のほか、女性のみに化粧をすることや制服着用を求める会社・職種も多く存在する。

女性に外見的な美しさを求める一方、同調圧力により皆同様の格好をすることがマナーや身だしなみとして正当化される。#KuTooや大学のミスコンなど、女性の服装や外見をめぐる日本の風潮を、海外メディアも度々否定的に報じている。

パンプスを好んではく人も多いだろうが、苦痛に感じるなら、自分らしさを表現できないなら、やめればよい。みんなが窮屈に思うマナーはなくせばよい。女性も男性もLGBTQ+の人も、好きなものを着る自由を手にすべきだ。

児玉治美
アジア開発銀行(ADB)副官房長。国際基督教大学修士課程修了。国際協力NGOジョイセフにて東京本部やバハマに勤務した後、2001年から国連人口基金のニューヨーク本部に勤務。08年からADBマニラ本部に勤務。19年から21年までADB駐日代表を務めた後、21年10月から現職。途上国の子どもを支援するプラン・インターナショナル・ジャパン評議員。

[日本経済新聞朝刊2023年1月16日付]