これからは、業務遂行上必要なスキル・マインドを持った人材をタイムリーに現場へ供給できるかが重要になります(注4) 。これは人事と現場の連携・協力体制がなければ実現しません。

特に、従業員5000人以上の企業では人事部門だけで社内人材のマッチングを図るのは困難なので、システムを活用し現場間で労働力の需給の解決を図るようにする必要があります。

自律的なキャリア志向は、若い人ほど高いので早期に手を打つ必要があります。若者のキャリア志向は、組織を率いるリーダーよりも専門性を極めるプロフェッショナルを志向する人が多いようです。

ゼネラリスト的なリーダーとして育成すべき人材のキャリアパスと、専門的なプロの道を歩む人材のキャリアパスと育成方法を区分けして準備しておく必要があります。

働き手の生産性の向上と、企業の育成の質が問われている

繰り返しになりますが、リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」です。働き手のスキルを変質させるという意味において、学びを提供する企業側の視点が強い言葉ですが、学ぶ本人の主体性なしに成功はありません。

可視化されたハード面のスキルよりも、「リスキリングしないとこの先まずい」という危機感がないと人は行動しません。まず、マインドの醸成に注力することです。

リスキリングは、あくまで手段であり目的ではありません。人的資本経営の実践に向けて、働き手に自発的なキャリアの意識づけを行いながら生産性の向上につなげることがリスキリングの目的です。

人材育成領域での質の向上がステークホルダーから注目されていることを人事責任者は認識して事に当たる必要があります。

油布顕史(KPMGコンサルティング)
組織・人材マネジメント領域で20年以上のコンサルティング経験を有する。大手金融機関・製造業・サービス業界の人事改革支援に従事。事業会社、会計系コンサルティングファームを経て現職。組織人事にまつわる変革支援-組織設計、人事戦略、人事制度(評価、報酬、タレントマネジメント)の導入・定着支援、働き方改革、組織風土改革、チェンジマネジメントの領域において数多くのプロジェクトを推進。企業向けの講演多数。
<注>
1 実際企業をみると、eラーニング講座を自由に受講させるような放任型のリスキリングが多いように感じます。
2 KPMGコンサルティング発表のリポート「Future of HR 2022(https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/jp/pdf/2022/jp-hr-survey-2022.pdf)」によると、人事の新たな価値創出にチャレンジしている日本の先進企業は、自社の組織風土に適したアプローチで改革を推進しています。
3 働く世代に応じてスキルセットとマインドセットの強弱をつけることも重要です。特に、年齢が高くなるほど自発的なキャリア構築意識は弱くなるのでリスキリングの必要性を丁寧に説明する必要があります。それでもリスキリングできるケイパビリティ(能力)が低い社員がいます。そうしたタイプには今の業務スキルでできる仕事を見つけてあげたほうが社内人材の有効活用という観点ではメリットが大きいと考えられます。
4 今後は、必要な人材を1ヶ月や3ヶ月といった期間で必要な現場へ異動させるようなアサインメント(人財配置)が主流になると思います。