さまざまな不満を折り畳み機能で解決
まな板を作る際に最も重視したのが、折り畳み機能だ。まな板に対するアンケートでは、大きさや収納性に関する不満が目立っていた。同時に、木製・樹脂製にかかわらず、8割以上のユーザーが「まな板で切った食材を鍋などに移すとき、こぼれ落ちてしまう」ことに不満を感じていた。折り畳めるようにすることで、これらの不満をカバーしようと考えた。
素材には、ポリプロピレン(PP)と、軟質素材のエラストマーを選択した。ポリプロピレンは、設計次第で折り曲げを繰り返しても壊れにくい「ヒンジ特性」という性質を持たせられる。この性質を利用してまな板を折り曲げることにした。難しかったのが、中央に入れるヒンジ線の調節だ。まな板を折るにはヒンジ線が必要なのだが、ただ線を入れただけではきれいに閉じることができず、フラットに広がらなかった。また、ヒンジ線の深さによっては折ったときに割れてしまうなどの問題もあった。加工メーカーと相談しながら何十回も調節を繰り返したという。最終的にはカットの技術を工夫して、これらの問題を解決した。



パッケージにも気を使った。「アッシュコンセプトのパッケージでは、その商品の良さが一目で分かるようなデザインを心がけている。しかし、カッティングマットには『2倍に広がる』『面で使い分け』『薄くて丈夫』など多様な良さがあって、なおかつ人によって一番良いと感じる部分が違っていた。それらすべてを言葉にすると分かりにくいため、9つのピクトグラムを作ってポイントを伝えた」(アッシュコンセプトの名児耶海取締役)。同時に「ここちいい。」と大きく記載することで、生活者の共感も誘った。

(ライター 近藤彩音、写真提供 アッシュコンセプト)
[日経クロストレンド 2022年8月31日の記事を再構成]