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映画のモデルとなった女性兵士軍団 ダホメ王国を守る

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ナショナルジオグラフィック日本版

かつて西アフリカにあったダホメ王国に、勇猛果敢な女性兵士軍団が実在していた。2022年9月に米国で公開された新作映画『ザ・ウーマン・キング(原題)』の題材になっているほか、架空のアフリカの王国を舞台にした映画『ブラックパンサー』に登場する女性だけの親衛隊のモデルとしても知られている。

しかし、ダホメ王国の女性兵士をギリシャ神話に登場する女性だけの部族になぞらえて「アマゾン」と呼ぶのは、植民地主義的であるだけでなく、彼女たちを例外的な女性として見るものであるため好ましくないと、著書に『ウィメン・ウォリアーズ はじめて読む女戦記』がある歴史家のパメラ・トーラー氏は指摘する。

17世紀後半から20世紀初頭まで西アフリカに実在した女性だけの軍団については、「全貌を知ることが重要だ」とトーラー氏は言う。軍団の起源と彼女たちを生み出した社会について探ることで、女性兵士たちの実像とその遺産をより多面的にとらえられるようになる。

ダホメ王国の勃興

ダホメ王国は17世紀に現在のベナンで創建された。王国は高度に組織化された政府をもち、半神とみなされる王は国の経済、政治、社会を完全に掌握していた。また、王への忠誠心と国の発展への貢献度によって平民から選ばれる官僚の評議会が、王を支えていた。

海に面していることと、戦略的手腕に優れた指導者の存在は、ダホメ王国がほかの沿岸の王国を征服し、支配を広げるうえで大いに役立った。しかし、ダホメ王国の支配を決定づけた最大の要因は、大西洋奴隷貿易の始まりと拡大だった。ダホメ王国の支配者たちは、1720年代から英国が海上封鎖を行った1852年までの間に、近隣の部族や国から数十万人を奴隷として英国、フランス、ポルトガルなどに売ったと推定されている。

ダホメ王国が戦ったのは奴隷を手に入れるためだけではない。農業用の肥沃な土地を獲得し、パーム油の貿易を拡大するためでもあった。この2つの事業から徴収される税金と関税は、王国の軍備の増強に使われた。

しかし、絶え間なく続く戦いによって男性の数は激減し、やがて女性たちが王国を守護する役割を担うようになっていった。

女性兵士はなぜ生まれたのか

一説によれば、ダホメ王国の女性兵士軍団の起源は、第3代国王ウェグバジャ(在位1645年ごろ〜1685年)に仕えた女性からなるゾウの狩猟隊だとされている。これがのちに女性兵士の軍団に統合されたのだという。

ただし起源については、ウェグバジャの娘である女王ハングベの命令により結成されたとする説が有力だ。ハングベは、18世紀初頭に自身と双子のアカバ王が謎の死を遂げたことで女王に即位した。

ハングベ女王が、女王と王国を守るためなら死もいとわない女性たちを集めたことは、家父長制の強いダホメ王国の社会では画期的な出来事だった。

ダホメ王国の女性兵士たちは、王の側室でもなければ、男性の気まぐれに従わなければならない召使でもなかった。こうした女性たちが出てくる素地はあった。歴史家たちは以前から、アフリカには女性が際立つ存在になる社会があったことを指摘してきた。トリルド・スカード氏は著書『Continent of Mothers, Continent of Hope(母の大陸、希望の大陸)』で、ダホメ王国の女性戦士たちについて次のように書いている。

「(彼女たちは)熱意と残忍さで有名だった。最も恐れられていたのはライフルで武装した者たちだった。弓の射手や、猟師や、スパイもいた。みな戦闘に備えて心身を鍛えていた。そして、『男たちは残れ! トウモロコシを育て、ヤシの木を育てよ。私たちは戦いに行く』と歌った。平時には(首都)アボメーの王宮を守り、果物や野菜を育てていた。捕虜を捕らえてきて奴隷として売ることもあった」

創作の裏にある現実

トーラー氏によると、ダホメ王国の女性兵士は、映画『ブラックパンサー』に登場する女性兵士のようなスマートで華やかな服装はしていなかったという。「19世紀当時の記録によれば、兵士の服装に男女差はなく、敵方は接近戦になるまで相手が女性であることに気づきませんでした。現代的な女性戦士の描写にありがちな、ほぼ水着のようなセクシーな格好ではなく、長いパンツを履き、チュニックを着て、キャップを被っていたようです」

彼女たちの活躍の物語は多くのヨーロッパ人探検家や奴隷商人を驚かせ、あなどれない強敵としてのダホメ王国の名声を高めることに貢献した。

「彼女たちは誰もが認める優れた射撃手で、非常に恐れられていました」とトーラー氏は言う。「接近戦にも長(た)けており、鉈(なた)によく似た武器を使っていました。そのうえ、近年まで欧米で言われたように、女性は戦闘に参加すべきではないとか、腕力が弱いなどと言う人もいませんでした」

ダホメ王国の戦争記録の大半は、沿岸の都市の支配権をめぐる近隣の王国との戦いに関するものだが、1870年代後半に港湾都市コトヌーをフランスの保護領とすることを認めてからは、状況が変化した。1883年には、ダホメ王国と対立していたポルト・ノボもフランスの支配下に入った。

1889年に即位したベハンジン王はヨーロッパ人の干渉を嫌い、フランスの保護領に対して奴隷の襲撃などの敵対行為をするようになった。そこから始まった第2次ダホメ戦争(1892〜1894年)によって、ダホメ王国の女性兵士が役割を終えたと指摘する歴史家もいる。

女性兵士の遺産

トーラー氏をはじめとする歴史家は、性別による制約を拒否する道を選んだ女性兵士たちが『ザ・ウーマン・キング』で正確に描写されているかどうかを見てみたいと望んでいる。それが決定的に重要なのは、世界におけるアフリカの女性のイメージを、貧困に苦しむ存在からもっと力強い存在へと変えるにはまだ長い道のりがあるからだ。

アフリカの女性たちが、貿易商、教育者、開拓者、祭司、治療者などとしてアフリカ諸国の発展に大きく貢献してきたことに議論の余地はない。ンドンゴ王国の女王アナ・ンジンガ、コンゴ王国の預言者ドナ・ベアトリス(キンパ・ビタ)、ベニン王国の女王イディアといった歴史的な指導者たち、そしてケニアの環境保護活動家でノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ氏やリベリア共和国の元大統領エレン・ジョンソン・サーリーフ氏といった現代のヒロインたちは、アフリカの女性のパワーと勇気の象徴と言える人々だ。

アートキュレーターでもある歴史家のアレクサンダー・アイブズ・ボルトロット氏は、米メトロポリタン美術館が公開するエッセーで、残る課題をこうまとめる。

「アフリカの歴史の中で、彼女たちの他にも重要な役割を果たした女性がいたことは確実だが、ヨーロッパ人との接触が始まる前の時代については、そうした女性たちの名前や功績を記した文書が存在しない。そのような女性たちに関する先住民の物語は現代まで伝わっていないか、まだ発見・記録されていない。それでも、アフリカ史の研究が進めば、他の重要なアフリカ人女性の存在もきっと明らかになるはずだ」

実在したアフリカ人女性が、力強く、自己を確立した存在として描かれるようになったことは、そのような目標を達成する一助となるかもしれない。トーラー氏は、ダホメ王国の女性兵士たちについて、より多くの人が知るようになれば好ましいと考えている。

「彼女たちは、女性が、社会や女性自身が思っているよりも強いことを証明したのです」とトーラー氏は言う。「彼女たちには戦うという選択肢があり、それは完全に正しい選択でした」

(文 RACHEL JONES、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2023年1月2日付]

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