本書では、全編で例えば「3つの要因」「DX成功の6つの要素」「経営者の7つのおきて」などポイントを整理した後にそれぞれ解説を詳述する表記がとられ、初学者の理解の助けになるよう工夫されているのも特長です。

第2章以降は、DXが進まない要因や課題、DXを成功に導くための具体的な手順や解決法を提示していきます。そこでは小手先のITシステムの導入や更新では通用せず、企業文化や組織の変革まで見据え、全体戦略をしっかり立てた上で、素早く実行に移す「テスト&ラーン」の発想が必要だと強調します。

これまでマッキンゼー・デジタルが支援を続けた企業の数多くの事例を引き合いに、顧客企業がITシステムを更新する際にシステムを継ぎ足しながら対策を打ってきた実態や、システムの構築でも自社の組織やビジネスの特性に落とし込まずITベンダーに丸投げする形で進めてきた問題点に切り込みます。テクノロジーではなく、企業戦略や組織文化に問題の所在を見いだすところに本書の独自の視点がうかがえます。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、「効率化」や「品質向上」などといった従来の業務改善系の試みとは基本的に大きく異なることを忘れてはいけません。
DXとは、企業変革そのものです。従来のビジネスのあり方はもちろん、企業の文化そのものの変革まで踏み込むことが求められる取り組みです。そのため、自社がどのような企業に変わるべきなのか、何を目指していくのか、戦略を明確に描いて、その戦略のもとで全社を挙げてドラスティックにDXを推し進めていくことが必要です。
しかし、それを十分に理解せずに、DXで何を目指すのかを曖昧なまま進めてしまった結果、期待したような効果を得られないままというケースも多々見られます。1200社以上のサーベイ結果からも、DXの成功を阻害する要因が明確に見えてきました。不明瞭な戦略、組織ケイパビリティの欠如、マネジメントでの考え方の不一致など、それらはいずれもテクノロジーの問題ではなく、マネジメントあるいは組織文化に起因する問題である点に、注目すべきでしょう。
(第2章 What? DXで何を目指すのか? 62ページ)

日本国内で成功率の低いDX

では、どうして海外勢に比べて日本がデジタル化で後れをとることになったのか。第3章では日本と、デジタル化が進んだ海外主要国とを比較し、いかに日本がIT投資に積極的でなかったかを考察しています。1995年と比較した各国のIT投資に関する経済協力開発機構(OECD)の統計を引く形で、2017年の米国や英国、フランスの状況をみると、いずれも95年の水準を上回っているのに対し、日本だけが横ばい圏かやや縮小傾向にあると指摘します。

その理由について4点挙げ、①経営層のデジタル投資への理解不足、②IT業務の外注化を続けた結果として社内に人材が育たず起きたデジタル人材不足、③非効率化したまま老朽化が進んだITシステム、③失敗を恐れるあまり大胆な投資を避けてきたと説明。こうした課題解決こそ日本企業がDXで成功するための要因だといいます。

DXで大きな成果をあげるためには、日本企業が構造的に抱えている問題を正しく理解して、それを乗り越えるための工夫が必要となってきます。
マッキンゼーが定期的に実施している企業変革サーベイの結果を見ると、DXによってパフォーマンスの向上と持続的な組織能力の構築に成功している企業の割合は、グローバルで見てもわずか16%に過ぎません。
さらに、製造、エネルギー、インフラ、製薬といった歴史の長い業界では、その成功率は4~11%にとどまっています。この数字からもわかるように、DXというのはそれだけ成功率が低い、難しい取り組みでもあるということです。
(第3章 How? 日本企業の足枷と挑戦 92ページ)
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DXは「一世一代の大変革」
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