DXを成功に導くには 日本企業に変革を迫る組織の壁『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』

DXを成功に導くには企業の組織文化の変革が必要だ

今やその言葉を目にしない日はないともいえるDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル技術を核に組織やビジネスモデルの変革が期待され、DX推進に取り組む動きが活発だ。デジタルを駆使して企業の組織変革や業務改革などを支援する、著名なコンサルティングファームのコンサルタントらがまとめたのが本書『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』だ。

同書ではDXに取り組む企業の事例や調査を多数挙げながら、DX推進の現状や課題、処方箋などを指南している。DX実現に向けた助言や解説にとどまらず、その背景に日本企業特有の組織文化の「壁」があることを浮かび上がらせている。本書の記述に読者層を40~50代の「10年後の会社の存亡のカギを握る、次世代リーダー」を想定して書いたとあるが、「デジタルネーティブ」世代として将来を背負う20~30代の若手リーダーにも読んでほしい一冊だ。

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黒川通彦氏
片山博順氏
松本拓也氏
平山智晴氏

編著者である黒川通彦、平山智晴、松本拓也、片山博順の4氏はマッキンゼー・デジタルのメンバー。本書によると、マッキンゼー・デジタルとは「デジタルテクノロジーの力を使って、クライアント企業のビジネスモデル変革による、企業価値向上を支援するチーム」との説明があります。リーダーの黒川氏と、松本氏はコンサルティングファームのアクセンチュア出身、平山氏は大手広告代理店、片山氏はマイクロソフトでキャリアを重ね、メンバーは多彩な経歴をもつ顔ぶれです。

DX推進は企業変革への道

本書は全5章で構成しています。第1章ではまず、デジタル技術の進化とそれに伴う産業構造の一大変化について、製造、小売り、金融、広告・メディアの各業界にスポットを当てて解説を試みています。製造業では独フォルクスワーゲンや英ロールス・ロイス、建機大手のコマツ、農機大手のクボタなどDXを活用した国内外の先進事例を取り上げます。いずれの企業も単なるメーカーを超え、データを活用して生産効率化を実現したり、製品作りから新たなサービス領域へとビジネスモデル転換に成功したりしたことが分かります。

しかし、日本国内では大半の製造業が「デジタル変革の波に乗り切れていない」(30ページ)と分析。その後れの原因について①消極的な情報技術(IT)投資、②強固すぎるサプライチェーン、③組織のサイロ化と、3つの要因を指摘しています。とくに②の自動車業界で典型的な、完成車、部品メーカーから中小企業まで巻き込んだ密接な供給体制、③は製造部門の技術力でシェアを拡大してきたことなど、かつての日本の強みが市場の変化に対応しきれず、弱みに変わっているといいます。

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日本国内で成功率の低いDX
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