男女の尿の悩みは「全然違う」
一口に尿の悩みといっても、実は男女でタイプが全く異なる。
先ほどのアンケート結果において、50代の男女で比べてみよう。
50代男女の尿の悩みベスト3

「夜中にトイレに行くために目が覚めることがある」と答えた人が多いのは共通している(男性で1位、女性で2位)。
それ以外では、50代男性の場合、1位に迫る48.2%で2位となっているのが、「排尿した後に尿がジワッともれてズボンにシミができることがある」だ。また、3位の「尿の勢いが低下したり、排尿に時間がかかるようになった」も30.0%と多い。
一方、50代女性では、「笑ったりくしゃみをしたり重い物を持った拍子に尿がもれることがある」が50.9%で1位となっている。3位は31.6%で「昼間に頻繁にトイレに行きたくなる」だ。
なぜこのような違いが生じるのだろうか。日本大学医学部教授の高橋氏は、「性別によって尿の悩みの種類が異なるのは、男性と女性とで膀胱と尿道の構造が違うためです」と話す。
男性の尿道は、膀胱から前立腺、骨盤底筋群、陰茎を通るため、L字形に曲がっていて、その全長は約20cmある。女性の尿道は、膀胱から骨盤底筋群を貫き、尿道口に真っすぐに伸びていて、長さは約4cmしかない。
膀胱と尿道の構造

そのため、尿道の短い女性のほうが、ふとしたはずみに尿もれが起きる「腹圧性尿失禁」になりやすい。重い物を持ったり、くしゃみをしたり、あるいは笑っただけでも尿がもれるのは、尿道が短いためなのだ。
一方、男性は、尿を出し切ったつもりでも、そのあとすぐに、下着の中でジワッと尿がもれてくる“チョイもれ”に悩まされる人が多い。これは、「排尿後尿滴下」と呼ばれる現象だ。
男性の場合、尿道を締める働きをする球海綿体筋の機能低下や、尿の勢いが低下してくると、陰嚢(睾丸)の裏側あたりで曲がっている「球部尿道」に尿が残りやすくなる。すると、排尿後しばらくして、たまった尿がわずかにもれ出てくるのだ。
年を取るに従って、尿を出すのに時間がかかるようになったことを実感する男性も多いかもしれない。尿の勢いが低下する原因の1つは、膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲むように存在する「前立腺」が加齢とともに肥大化し、尿道を圧迫しているためだ。
前立腺が肥大化することで尿に関する症状が出る状態を「前立腺肥大症」と呼ぶ。前立腺が肥大化していくメカニズムは分かっていないが、男性ホルモンの減少などが関わっていると考えられる。
前立腺肥大症になっても、「どうせ尿のキレが悪くなるだけだろう」と放置していると、尿が出なくなる「尿閉(にょうへい)」という状態を引き起こすこともある。ひどくなると、腎機能の低下をはじめとする重大な合併症につながることもあるので注意が必要だ。
女性の腹圧性尿失禁も、男性の前立腺肥大症も、重症の場合は適切な治療が必要になる。泌尿器科で医師に相談しよう。
(図版制作 増田真一)
[日経Gooday2022年9月9日付記事を再構成]