
リソー教育(進学個別指導塾TOMAS)が着実に進学実績を伸ばしています。創業者の岩佐実次会長が「教育とは個性豊かな人間を育むこと」との思いから開始した1対1の個別教育は、個々の学習状況に合わせて丁寧に指導してほしいと望む子どもや保護者からも強く支持されています。これまでの同社の成長の原動力となったのは「理想を掲げ、それに向かって粘り強く突き進む」という企業風土です。岩佐会長と若手社員がそれぞれの思いを語り合いました。
若い人には私の失敗から学んでほしい
――岩佐会長が教育を志したきっかけは。
岩佐 心理学を学んだことがスタートです。心理学の古典的なテーマに人間の発達は遺伝か、環境かというものがあります。さまざまな説がありますが、私は「人間は教育を受けることによって大きく成長する」と学びました。そこから教育がすべてに勝る環境であると考えるようになりました。
ただ、大学時代は学園紛争の真っただ中。卒業するときもオイルショックの大不況で29歳まで家庭教師などのアルバイトをしていました。このままではいけないと思い、関心のあった教育関連の会社に就職。教材の開発、販売などをしていましたが、私は子どもたちの指導をしてみたかった。モノを売ることよりも、見えないサービスを売ることの方が重要だとも考えていました。会社の役員に提案しても、賛同してもらえず、思い切って独立することにしました。
――1対1の個別指導教育を始めた理由は何ですか。
岩佐 ちょうどそのころ少子化問題が顕在化し、社会問題となっていました。塾の経営にとっても大問題です。生き残るためには気配りの行き届いたサービスをしないと淘汰されると考えました。また私は集団指導をすることに良心の呵責(かしゃく)を感じていました。実際に授業をしていると何人かはついてこられなくなる。それが分かっていても残りの子どもたちのために先に進めなければならない。そこで、まず1クラス6人、それから1対1の個別指導を思い切って開始しました。社内は「理想主義では経営が成り立たない」「だからどの塾でもやっていないのだ」と大反対でした。でも私が試算してみると、きちんと利益が出る。社員一人ひとり説得して、何人かは会社を去りましたが、何とか事業化することができました。
わが社の場合、講師と生徒に任せきりにせず、その上に監督官を付けています。現場の講師に「どこが(指導するうえで)難しいのか」とか「親御さんはこう言っているけど、実際はどうなのか」など講師とコミュニケーションをとりながら、アドバイスしています。
監督官は正社員ですから、人件費がかなりかかります。もし正社員がいなければ利益率はかなり上がりますが、それでは難関校への進学率は上がりません。実際には医学部だけでも毎年500人以上が進学し、「TOMAS」は今やブランドとして評価いただいています。
集団指導授業の「答えは1つ」というような教え方にはやはり抵抗を感じます。教育の原点は個性豊かな人間を育むことです。部活や習い事とも両立できる。勉強の進んでいる子はさらにできるようになり、その結果、有名難関校合格につながります。勉強の遅れている子はつまずきを探してやると階段を上れるようになる。個別指導はある意味で究極の指導だと思っています。
――教育事業はサービス業だとも明言されています。
岩佐 「教育とは何か」を定義するのは「人間とは何か」を定義することに似ています。だから考え方がバラバラで、意見がすぐに対立する。「営利に走るべきではない」というような考えもあります。だから我々がやっているのは「一般企業と同じサービス業だ」という柱を社内に打ち込んだのです。そうしたら上手にまとまれましたね。
給料や手当など社員の待遇は業界トップクラスです。労働条件が良くなければ社員がやりがいをもって働けませんし、会社の成長にもつながりません。会社には学閥、同族のようなものはありません。人事評価も公平であることを貫徹しています。
これまでいろんな苦労をしました。失敗した数は他人には負けないと思います。でも失敗から多くを学んできました。わが社が社員に多くの研修を行うのは「自分の失敗を教えたい。私の失敗から学んでください」と思っているからです。
若い人には壁や困難に当たっても簡単に諦めないでほしい。私も内心は「個別指導はダメかもしれない」という不安に襲われることもありました。でも粘って粘って貫いたら支持者・応援者が一人ひとり増えて実現しました。粘っていれば支持してくれる仲間がだんだん集まってきます。
子どもたちが希望や夢を失わない社会を
――塾は今後、どんな方向に向かうのですか。
岩佐 少子化はさらに進んでいます。しかし子どもがいなくなるわけではありません。受験という制度がある限り、そのフォローをするサービス業は存在し続けると思います。ただ、進化していかなくてはなりません。

今は集団指導も含めた大手の進学塾がライバルだと思っています。すぐには勝てないでしょうが、早ければ3~5年ぐらいで個別指導の優秀さを証明できるのではないかと思っています。
――学校との連携も始めました。
子どもが非行に走り荒れている学校もあり、学校改革は大きなテーマです。民間の我々がどこまで協力できるか未知数な面もありますが、今は学校の中にわが社の個別指導塾「TOMAS」を設置し始めています。契約導入校はまもなく100校になります。
学校は集団指導です。それについていけない子どもの苦手なところを個々に拾って、補えるのは個別指導なのです。個別指導なら学校と組んで改革ができると思っています。将来的には1000校ぐらい設置できるのではないかと考えています。
またコロナ対策で学校がオンライン教育を導入しています。しかしシステムを導入しても運用する人がいません。それをわが社がやろうということで、先日、学校にオンラインシステムを導入しているKDDIグループと提携しました。私はこれから国に働きかけて、一緒に学校改革を進めたいと考えています。それができれば国家の発展にも協力できると考えています。
――事業以外で取り組んでみたいことはありますか。
岩佐 子どもの自殺が増えているというのはとても悲しいことです。子どもたちが希望や夢を失わないような社会にしなければならないと思います。だから私の個人資産を使って、いい仕事をされた方を表彰して支援するミニノーベル賞のようなものを作りたいと考えています。まだ正式に決まっていませんが、その準備を進めています。
子どもの教育というのは「正解がない」職業だと思っています。その中で、常に最善を目指し、あきらめずに考え続けることが大切だと肝に銘じておこうと改めて決意しました。私の根底には「社会を良くする仕事がしたい」という考えがあります。そのための第一歩として、まずは自分の経験を子どもたちに伝えることから始めようと思います。そして子どもたちの未来というものを広い視野で、支えていきたいと思います。

集団指導の場での「良心の呵責」ということは私も実際に経験したことがあります。これからも個別指導で一人ひとりの個性を伸ばしていきたいと思います。私自身、まだ1年目で様々な壁に突き当たることも多いのですが、「まだできる」という可能性を信じて業務にあたりたいと考えています。また、子どもたちにも「あきらめない」ということを伝えていかなくてはならないとも感じました。


※本内容は2021年12月16日の日本経済新聞朝刊に掲載されました。
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