本気のプロチームを組織 リノベに生きたラグビー思考リノベる社長 山下智弘氏(下)

リノベるの山下智弘社長は、「新築が買えないから中古」ではなく、中古を積極的に選び自分らしくリノベーションする暮らし方を提案する

中古物件を新築より低価格で購入し、ライフスタイルに合わせて大胆に改修するリノベーション。2010年創業のベンチャー、リノベる(東京・港)は「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」をミッションに掲げ、リノベーション市場を開拓してきた。社長の山下智弘氏(47)が新築偏重の住まいのあり方に疑問を感じたのは、ゼネコンで用地買収に関わっていた20代の頃。マンション新築のために立ち退きを迫られ、家族との思い出が詰まった家を失ったおばあさんが発した「人生を奪われた」という一言がきっかけだった。どうすれば既存の物件を生かしながら、個性や時代に合った「自分らしい暮らし」を提供できるのか。模索が始まった。

資産価値が住宅投資額を上回る欧米

海外で暮らすラグビー仲間を訪ね歩く旅から帰国すると、日本の住宅をめぐるさまざまな課題が見えてきた。そもそも、日本では住まいのことが日常の話題になることが少ない。周囲を見渡しても多くの人が、白いクロスに蛍光灯という個性の感じられない家に住んでいた。

「欧米の人がおおらかに生活を楽しんでいるように見えるのは、別に彼らが皆、お金持ちだからではありません。8割の人が中古物件を手ごろな値段で買って、賢く作り替えているので、その分暮らしに余裕があるというだけです。一方、日本は9割の人が新築物件を高額な住宅ローンを組んで購入していました。そのローン返済が大変なので、暮らしを楽しむ余裕が持ちにくい。しかも新築住宅は買った途端に資産価値が目減りしてしまいます」

「人々が住宅に投資した累計額から、住宅の資産価値の総額を差し引くと損失は500兆円。米国をはじめ海外は逆で、資産価値が投資額を上回ります。他にも日本は取引物件全体に占める中古の割合が欧米に比べて極端に低く、そもそも中古を買うことが選択肢にのぼりにくいとか、空き家が増え続けているとか、いろんな課題が山積していることがわかりました。それらの課題と、おばあちゃんの一件が僕の中でつながって、リノベーションこそが課題解決につながると確信したのです」

「リノベーション」は「リフォーム」と混同されやすいが、山下氏は「リフォームは経年変化でマイナスになった部分を修復し、新築に近づけるという発想。リノベーションは既存の物件に大きく手を加えて新たな機能や価値を付け加え、マイナスをプラスアルファにするという考え方。根本が違う」と説明する。

2000年、リノベーションを本格的に学ぼうと、店舗デザインで有名な大阪のデザイン会社、東西新風堂(大阪市)の門をたたいた。当時、関西ではカフェブームが起きており、既存の店舗をおしゃれに改装するデザイン会社が注目されていた。中でも同社には際立った特徴があった。デザイン会社は主に設計を担当し、施工は別の工務店に外注するケースがほとんどだが、同社は設計だけでなく工事までを一貫して行っていた。

「僕も図面を引くのはもちろん、大工から左官、水道・電気工事、内装まで一通り全部やりました。1日4時間しか寝られないハードな生活でしたが、2年半で10年分くらい勉強させてもらいました」

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