「いつも同じ格好」でも着こなしこそがこだわり

こんなエピソードもある。某バラエティー番組に出演した時、司会者の元アイドルグループのリーダーだったNから「西島さんってお会いするといつも同じ服を着てませんか?」といじられて「微妙に違うんですよ!」と苦笑しながら猛反論した。しつこく服ネタでいじってくる司会のNに対して「毎回違います! きょうは(インナーに着ているカットソーは)Vネックじゃない!」と猛反論。こういうおちゃめな面も西島ファンにはたまらないんですけどもね。

一見いつも同じような服に見えるともいわれる西島秀俊さんのスタイルこそが「ノームコア(究極の普通)」なのだ

ちなみにこの時の西島氏の格好は、ネイビーのカジュアルセットアップスーツで、インナーはひと目で上質な素材とわかるセットアップと同系色でそろえたカットソーである。

そう、この着こなしこそが西島氏のこだわりである。件のバラエティー番組の司会者のNから言えば「いつも同じ格好」、ファッション的にいえばノームコア(究極の普通)スタイルだ。

俳優、西島秀俊が着ればどんな服でもカッコよく見えるし、カッコよく着こなせてしまう。だからこそ、西島氏はあえて普段からちょっとでもおしゃれをしていることがわかってしまうような格好は絶対にしない。これは演技派俳優と呼ばれる彼の芝居に対する役作りにも通じる。例えばコミカルな役や情けない役を演じる時は、絶対にいい姿勢で立ったり歩いたりしない。ちょっとでも姿勢をよくするとたちまち素のイケメンがバレてしまうので、あえてわざといつも猫背ぎみの姿勢でダサさやカッコわるさを強調している。

ラグジュアリーブランドからごくシンプルな装いまで自在に着こなす(2009年撮影)

そんな西島氏がこだわるノームコアスタイルの最たるお手本が、映画『ドライブ・マイ・カー』で彼が演じた主人公の家福(かふく)のファッションである。

舞台俳優で演出家の家福は、いつも全身黒を基調とした格好で、ハーフコートもジャケットもパンツもインナーに着ているカットソーも黒色。チラッとしか見えないが、靴も黒いサイドゴアブーツのようだ。劇中の広島へと出張でバゲージに着替えを詰めていたシーンで、一瞬だけ着替え用のカットソーが映ったが、チラッと見えたタグから「Theory」の長袖のVネックのカットソーと確認できる。色は黒ではなくグレーだがこれも黒に合わせやすい配色である。映画のポスターにも使われている、赤いサーブの前に立つシーンで家福が着ている黒いジャケットはおそらくあれはニットジャケットだと思う。

SUITS OF THE YEAR 2022
Watch Special 2022
SPIRE
次のページ
「ドライブ・マイ・カー」の主人公では黒ずくめ