
あふれるお取り寄せ情報の波にさらされ、自分の暮らしに合う良品が見つけづらいとお悩みの方に送る「おいしいお宝発掘」。第1回は老舗のお出汁(だし)をご紹介する。
家でも店でも、昆布やかつお節でていねいに引いた出汁を味わう機会は貴重になっているのではないか。今回は店の命ともいえる出汁をオンラインショップで販売している大阪の老舗2軒を紹介する。いずれも希釈せずに使えるストレートタイプで味付けもいらないという便利さ。
麺類や鍋料理はもちろん、煮物やご飯物、温かい汁物などあらゆる料理を店のクオリティーに引き上げてくれる優れものだ。師走を控え、寒さも日に日に厳しくなるころ。暖房機器や冬物の準備が終わったら、体を内側から温めるおいしい出汁も今からスタンバイしておきたい。
「道頓堀 今井」30年以上続くロングセラー商品
まずは、おろししょうがをたっぷりのせたあんかけうどんで知られる大阪「道頓堀 今井」のストレート出汁をご紹介する。楽器店から戦後すぐ飲食店に業態を変え、1949年(昭和24年)には先々代が現在の味を作り上げた。ストレート出汁は1リットル入り918円(送料別)。名物「うどん寄せ鍋」の追い出汁用に商品化したところ、自宅のうどんや料理用に買い求める客が絶えず、30年以上続くロングセラー商品となった。道頓堀 今井のオンラインショップで購入できる。

店舗で提供する出汁は香りが飛ばないよう30杯分をこまめに引くこだわりを続けている。天然真昆布を弱火でゆっくり時間をかけて沸騰させ、さば節とウルメ節でうまみの相乗効果を引き出したあと、しょうゆとみりん、砂糖、塩で調味する。取り寄せの出汁は材料と引き方、調味の方法は同じだが、仕込む量だけが店と違う。消費期限は出荷から1週間以内。短いと感じるかもしれないが、店と変わらない味を届けてくれるのだから、むしろ長いと受け止めたい。
社長の今井徹さんが、自宅で最近繰り返し作っているという食べ方を伝授してくださった。ストレート出汁とゆでうどんのほかに用意するものは、豚肉の切り落としとパクチーの2つのみ。関西では肉うどんといえば牛肉だが、まさかの豚肉である。そして和の出汁にパクチーというのも意表をつく組み合わせだ。もちろん店では提供していない。

ストレート出汁を温め、一口大に切った豚肉をさっと煮て取り出しておく
続いてゆでうどんを加え、ふっくらとするまで温めたら出汁と一緒に器に移す
仕上げに豚肉と刻んだパクチーをのせる
「今井さんのところの出汁でそんなことをするのはもったいない、とよく言われるんですが、うちの出汁はうまみがしっかりしていてコクもあるので味が負けない。他の素材ともバランスがとりやすいんですよ」(今井さん)
うどんは別鍋でゆでると水っぽくなるので出汁の中でゆでてほしいそう。できればうどんも今井のうどん玉があるとベストだ。奈良のメーカーが製造しているもので、口当たりと喉ごしがとてもいい。