認知症リスクを下げる可能性がある6つの食品

この研究結果を踏まえ、日本人が認知症を遠ざけるのに役立ちそうな6つの食品とそのポイントをまとめた。

〈大豆製品〉

佐治氏の食事調査でも、大豆の摂取が多い人は認知症リスクが低かった。豆類やイソフラボンの摂取が多いと、認知機能低下リスクが下がるという研究もある。「大豆には抗酸化作用の高いイソフラボンや食物繊維も含まれる。味噌や納豆など日本を代表する発酵食の材料でもある」(佐治氏)。

〈果物類〉

「腸の炎症物質であるLPS濃度が低い人は果物類の摂取が多かった」(佐治氏)。果物には腸の有用菌の餌になる水溶性食物繊維、抗酸化作用のあるビタミンCやポリフェノールが豊富。

〈キノコ類〉

「キノコは大豆と同様に日常的に食べている人、食べない人の差が大きい。キノコには肥満や糖尿病を抑制する効果もある」(佐治氏)。豊富な食物繊維やミネラルのほか、脳機能だけでなく骨や筋肉の維持にも関わるビタミンDの摂取源にもなる。

〈魚介類〉

魚に含まれる魚油(DHA=ドコサヘキサエン酸)は血液中濃度が高まるほど認知機能低下リスクが下がるという研究もある。「私たちの研究でも魚介類の摂取頻度が多い人は腸の炎症物質であるLPS濃度が低かった」(佐治氏)。

〈コーヒー〉

食事調査研究で高い認知機能改善効果を示したのがコーヒー。コーヒーはクロロゲン酸というポリフェノールを豊富に含み、日本人の主要なポリフェノール源とする報告もある。11の研究結果(対象者約2万9000人)を解析した中国の研究では、コーヒー摂取量が最も多い群ではアルツハイマー病リスクが低下することが分かった[8]。

〈プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)〉

発酵食品は脳腸相関にも効果を示す可能性が高い。最近、国内で行われて世界的な注目を集めたプロバイオティクス研究が、ビフィズス菌「MCC1274」を16週間摂取することによって認知機能が改善したというものだ[9](図表4)。「被験者を無作為に分けるランダム化比較試験という信頼度の高い試験で得られた結果で、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)を正すことが認知機能改善に役立つ可能性があると考えている」(佐治氏)。

軽度認知障害の症状があるが健康な50~79歳の80人を対象に、ビフィズス菌「MCC1274」を1日1回摂取する群と、プラセボ(偽薬)摂取群に分けた。16週間後に摂取前後の認知機能スコア(アーバンス神経心理テスト)を比較した結果、ビフィズス菌摂取群では認識のスコアが改善。特に「即時記憶(指示された情報を即時に記憶する)」「視空間・構成(図形などの空間を認識し構成する)」「遅延記憶(単語の再生や物語記憶など)」に関わるスコアが改善した。(データ:J Alzheimers Dis. 2020;77(1):139-147.)

これらの食品は脳腸相関を健全にするのはもちろん、肥満や生活習慣病の予防、見た目の老化予防など若さの維持に多方面から働いてくれる可能性がある。まずは、あなたのライフスタイルに合う食品を選び、意識して食べるようにしてみてはいかがだろう。

(ライター 柳本操)

佐治直樹
国立長寿医療研究センターもの忘れセンター医長、副センター長。岐阜大学医学部卒。兵庫県立姫路循環器病センター神経内科医長、神戸大学大学院医学系研究科大学院課程修了(医学博士)、川崎医科大学脳卒中医学教室特任講師・特任准教授などを経て、2015年から現職。腸内細菌と認知機能、脳卒中、心房細動、難聴などについて研究を行う。

[1]Sci Rep. 2017 Oct 19;7(1):13537.

[2]Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.

[3]Front Cell Infect Microbiol. 2017 Jul 11;7:318.

[4]J Alzheimers Dis. 2022;86(4):1947-1957.

[5]Br J Nutr. 2020 Oct 14;124(7):654-667.

[6]老年内科,2020,2(4):464-472

[7]Nutrition. 2022 Feb;94:111524.

[8]Nutrition. 2016 Jun;32(6):628-36.

[9]J Alzheimers Dis. 2020;77(1):139-147.

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