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トップがきちんと把握しておくべきマネジメントの基本とは何か。目の前の問題解決で実績をあげ、社長に上り詰めたとき、ふと不安がよぎったり自信が持てなくなったりする瞬間が訪れるかもしれない。そんな瞬間はマネジメントの一角を担う役員昇格のときにも訪れる。社長の悩みに寄り添ってきた気鋭のコンサルタントが意思決定のよりどころになる経営書を紹介するシリーズの後半は、そんな新任役員に向けてお届けする。

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「結局何がいいたいのかな? もっと論点を明確にしてほしい」と社長にチクリと刺された。

来年度の事業計画を社長と議論するために、さまざまなデータを部下に集めさせ、毎回の会議にもっていくが、どうも社長からOKがでない。前任社長までは、大量の情報を出していれば、なんとなく議論が進んでいた気がしたが、新社長になってからはどうもうまくいかない。

会議の論点は何か、自分なりの結論は何かを聞かれるが、冷静に振り返ると、これまでの長い会社員人生において「何を議論すべきか」から考えることは少なかった。上から与えられてきたことを、どうこなすかしか考えていなかったし、ミッションをこなした部下をめでていればよかった。

困った顔をしていると社長からさらに言われる、「部下を酷使して情報を持ってきてハイ終わり。ではなくて、イシューをちゃんと明確にしてほしい。データもどっかで見たようなデータばかりだよ」と。

知らないことのイシューは作れない

漫然とした会議をするのではなく、何を解決したいのか、「問い=イシュー」からちゃんと考えようという話はよく語られている。これは簡単そうで実は難しい。

人はイシューを考えようとして、曖昧な表現に終始したり、言い換えたりして満足してしまうことが多々ある。例えば、「なぜわが社はよい戦略が作れないのか?」を考えようとして、「なぜわが社は戦略的に考える癖がないのか?」という問いを立てている場合は要注意だ。ほぼ同じことを言っているだけで、主張が変わっていない。

なぜそうなるかというと「戦略」という言葉の定義を、おそらく話をしている当の本人もわかっていないからだ。戦略を、「お金の投資先を決める」という意味で使う人もいれば、「来週の会社がやるべきことを決める」という意味で使っている人もいる。何について話しているかが決まらなければ、そもそも「いい」も「悪い」も判断できないはずだ。

さらに「考える癖」と言われても、「どこにお金を使うか」を決めるための考え方と、「来週やることを決める」ための考え方は違いそうだ。ファイナンスの知識不足を指しているのか、先週起こったトラブルの解決方法が分からないのか、解決策を調べる方法が分からないのか。やはり、話している当人がそもそも言葉の意味を知らないと、話が具体化されない。

何を解決したいのか、「問い=イシュー」からちゃんと考えるのは意外と難しい(写真はイメージ=PIXTA)

何を解決したいのか、「問い=イシュー」からちゃんと考えるのは意外と難しい(写真はイメージ=PIXTA)

ビジネスは人の行動を変えなくてはいけないので、具体的な議論が不可欠だ。だが日々指示を出している側も、指示を受けて作業をする側も、このような曖昧な言葉を連呼して思考停止してしまっていては意味がない。

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