変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

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変化の激しい時代、個人も組織も「学び直し」の重要性がいわれる。その際、忘れてはならないのが「手放す」ことだ。新しい技術、方法、考え方、ビジネスモデルなどを身に付け、成果をあげるためには、まず過去の成功を手放さなければならない。習慣などを意識的にやめ、新たに学び直すことを「アンラーン」という。

アンラーンの必要性について、わかりやすい例をあげてみたい。「村神様」が2022年の新語・流行語大賞にもなった、プロ野球東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手。今季は、昨季とは打撃フォームを変えていたという。昨季本塁打王を獲得しながら、そのフォームを捨てて新たなフォームを身に付けた結果、56本塁打という大躍進を遂げた。「過去の成功」を手放すことで、大きな成功をつかむことができた好例だろう。

本書『アンラーン戦略』(山内あゆ子訳)は、アンラーンの威力や必要性、その心構えや方法論を解説する一冊だ。著者のバリー・オライリー氏は、ビジネスアドバイザー、起業家、作家。スタートアップから巨大企業までさまざまな企業をサポートするほか、執筆活動も行っている。

「脱学習」は痛みを伴う

著者は、古い形式や考え方を捨て去り、今後も成功し続けるために「アンラーンのサイクル」を提唱する。「アンラーン=脱学習+再学習+ブレークスルー」がそれだ。

新しいことを学ぶためには、過去には成功したけれど、今や成功への障害になっている考え方や行動様式を意図的に忘れること、すなわち脱学習が欠かせない。脱学習の難しさは、「謙虚さ」が必要なことだ。現在の自分の限界を認め、これまでのやり方を否定する勇気がなければ、脱学習はできない。

本書の監訳者を務める中竹竜二氏は、日本ラグビーフットボール協会で指導者を指導するコーチングディレクターなどを務めたほか、企業のリーダー育成トレーニングなども行う人物だ。「監訳者まえがき」の中で、「学びは痛み」だと述べている。慣れ親しんだ心地よい場所から「一歩」を踏み出すことは、痛みを伴う。しかし、その痛みなしに、次に進むことは難しいのだ。

リーダーが自己否定する必要があるという意味で、個人以上に難しいのが組織における脱学習だろう。リーダーは、部下、あるいは上司に対しても、これまでの自分、もしくは組織のやり方の限界を認める必要がある。ときにプライドを捨て、弱みを見せやすい組織風土、チームの心理的安全性も重要になるだろう。

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