2014年に職種別採用の「人事統括」の職種で採用された篠原さんも入社直後に、それまでP&Gが進めてきた「柔軟な働き方」の次世代版を作るというプロジェクトを任された。コロナ禍で日本企業でも在宅勤務制度が一気に普及したが、P&Gは20年近く前から同制度を導入。篠原さんは上司から、従来の仕組みをアップデートし、その年の12月までに社内に浸透させてほしいと言われた。

「周囲の人も1年目からプロジェクトリーダーを任され同じように悩んだ経験があるので、サポートの仕方も的を射ています。社内でコーチングのスキルを高める研修が充実しているのも大きいですね。上司が指示を出し、新人が従うほうがお互い楽です。でもそれでは当社が求める『短期間での著しい成長』は望めません。ですから手間はかかってもオーナーシップを持って難しい課題に取り組んでもらうことを徹底しています」

それぞれの強みを語り合う社風

P&Gが職種別採用を実施しているのは、キャリアのスタート時点で納得感と目的意識を持つことが、人生の主導権を持つうえで重要だと考えるからだ。同書でも石川部長は「汗をかいて頑張ることだけが、努力ではない。その前段階で自分がどのフィールドで努力するか戦略的に考えることが大事」と説明するが、採用形式にかかわらず、「自分が努力するフィールドを自分で決める」という意識はすべての就活生、若手社員にも参考になるはずだ。

では、そのフィールドをどうやって決めればいいのか。そこで参考になるのが、篠原さんのお薦め本の2冊目、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』。テーマは「強みの発見」だ。

「なぜそこまで強みにこだわるかというと、P&Gでは“Be yourself at work”という考え方を大切にしているからです」と語る篠原さん。

P&Gでは新入社員全員に、同書で紹介されている強みの診断テストを受けてもらっているという。内定式や入社後研修のワークショップでも若手社員を呼び、自分にはどんな強みがあり、それをどのように仕事に生かしているか具体的なエピソードを交えながら語ってもらう。

「リーダーの研修でも『あなたの部下の強みは何?』と聞かれますし、さまざまなチームビルディングの場でも、自己紹介で自分の強みについて話すなど、共通言語として完全に定着しています。なぜそこまで強みにこだわるかというと、P&Gでは“Be yourself at work”という考え方を大切にしているからです。その人が自然に持つ思考や感情、行動パターンを『強み』として最大限に生かすことで、本人は最も成長できますし、それが組織全体、さらにそれぞれのビジネスの成長にもつながります」

『藁を手に旅に出よう』では、周りの空気に流されたり、上司の指示にただ従ったりするのではなく、努力するフィールドを自分で決め、目的のピラミッドを意識しながらオーナーシップを持ってキャリアを切り開いていこうという覚悟が学べる。「実際に行動に移そうとした時に糧になるのが『ストレングス・ファインダー』でわかる強み。両方あってうまく回るのでは」と篠原さん。後者は就活界隈ではよく知られた本だが、『藁を〜』は篠原さんは自身の弟にも薦めたそうだ。

「ペルソナとして主人公以外にもいろんな悩みを抱えた若手社員が出てくるので、自分だったら?と考えられます。読むタイミングによっても、受け取れるメッセージも違ってくると思うので、若手だけでなく幅広い世代のビジネスパーソンにお薦めします」

(ライター 石臥薫子)

藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室

著者 : 博行, 荒木
出版 : 文藝春秋
価格 : 1,760 円(税込み)

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0

著者 : トム・ラス
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,980 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介