同書の中で石川部長は「自分の得意な土俵は自分で定義せよ。人に決めさせるな」「リーダーとは、『自分だけしか見えていない未来』に向けて歩き始めている人。今この瞬間からリーダーとして生きよ」など、迷える新人には刺激的なメッセージを発し続ける。

「目の前の仕事で精いっぱい」と悩んでいた後輩に、篠原さんは石川部長の言葉を掛け合わせながらアドバイスしたという。

「石川部長の話に通底しているのは『人生やキャリアに対して主導権、オーナーシップを持ち、自分らしさを大切にしよう』という考え方。それは当社の人材やキャリアに対する考え方とも一致します。私はつい先日『目の前の仕事をこなすだけで精いっぱい』と悩む後輩から相談を受けたのですが、本の中に出てくる『レンガ積み職人』の寓話と石川部長の言葉、そこに弊社の企業理念を掛け合わせながらアドバイスしました」

3人のレンガ積み職人に何をしているのかと聞くと、1人目は「レンガを積んでいる」、2人目は「壁を作っている」、3人目は「人が祈る教会を作っている」と全く違う答えをしたという寓話だ。石川部長は「システムの法人向け新規営業をしている」と言うサカモトに「その仕事は何のためにやっているのかしら。世の中にとってどんな意味があるのかしら」と尋ねる。サカモトが「お客さんの仕事の効率化」と答えるとさらに「その目的は?」と問い続け、5段階の「目的のピラミッド」を作らせる。

「石川部長が言わんとするのは『どんな目的を持つかによってモチベーションと仕事のクオリティーが決まる』ということ。私も後輩に、目の前の仕事は何のためにやっているのか、自分はどうありたいのか、ビジョンを作ってみてはと話しました。後輩はその課題に向き合った結果、モヤモヤを整理できたようで、後日、スッキリした顔で自分なりの考えをチームのリーダーにプレゼンしていました。そんな風に本をヒントに日々の対話が弾み、お互いの価値観や人生観を知ったり、キャリアや成長についての考え方を共有したりするカルチャーがあることもP&Gの特徴だと思います」

入社1日目からリーダー 「与党思考で」

『藁を手に旅に出よう』で篠原さんが特にP&Gの人材育成の考え方と共通点を見いだしたのは「野党思考を脱却し、与党思考で」という箇所だ。ここで石川部長は、「野党思考」ではシステム的な視野を欠いたまま断片的・短期的な正論を述べることに終始し、「外の世界に理想郷があるはずだ」と現実逃避を繰り返してしまうと指摘。「普段から『自分が責任者だったらどうするか』という与党思考でトレーニングしておくことが重要」と諭す。

「これは私自身、内定者に言い続けていることですし、常に自身でオーナーシップを持つという当社のリーダー育成の考え方とも一致します。P&Gでは未来のCEO(最高経営責任者)は自分たちで育てるのだという意識が徹底しており、社員は入社1日目から大きなプロジェクトのリーダーを任されます。指示を待つのではなくあなた自身が考え、意思決定をしながら周囲を巻き込んで実行してくださいと言われるのです」

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