2022/5/23

「良いもの」の感覚に変化

――EVの新型車が次々と発表され、日本では2022年が本格的な普及元年と言われています。一方、EVが発信するサステナビリティーなどの価値観はラグジュアリーカーにとっては両立しにくい概念ではないかと思います。

「確かに最近まで最高級車には最高の素材を、例えばシートにはぜいたくなレザーを求める人が多かったかもしれません。高いお金を支払うなら、一番良いマテリアルをというわけです。その『良いもの』についての感覚が近年、変わってきたのではないかと思います。アウディでは1000万円台のe-tronのシートなどに再生素材を用意しています。私は最初、チープに見えないだろうか、アジアでは通用しないかもしれないと慎重に構えていました。ところが、実際には再生素材を選び、満足する方々が結構多いのです」

日本人の母、ドイツ人の父を持つ。「良い物を長く使うというカルチャーは日本とドイツに共通するものだと思います」

――高級時計でもケースがゴールドでベルトは再生素材だったり、時計を収める箱がリサイクルボックスだったりするなど、ラグジュアリーブランドがサステナビリティーをうたう傾向が強まっています。

「プレミアムカーであるアウディの購入理由としては『デザイン』がナンバーワンです。他に格好良さ、走り、高級感などもあるでしょう。そこに新たなディメンション(次元)が1つ増えたわけです。どうせここまでお金を出すなら、何かしら環境に配慮しているものがいいという理由です」

「最近、ジャケットスタイルが増えました。ドイツ本社でもノーネクタイがほとんど。これからはカジュアルなファッションをどう着こなすかを考えたいところです」。愛用のカバンはブーツとおそろい

「アウディのお客様でそういう方が多いのはなぜかと考えますと、121年もの間、車を作ってきたアウディには、チャレンジャーのDNAが埋め込まれているからだと思います。フランス伝統の自動車耐久レース『ル・マン』では、不利だといわれたディーゼルエンジンで初めて勝利を収めました。アウディは固定観念を覆すチャレンジャーであり、新しい分野にトライするプレミアムブランドというイメージがあるので、新たなディメンションが加わったとしても、お客様はそこにギャップを感じないのでしょう」

深みのある美しい色がお気に入りというベルルッティのブーツ。「日本に来る前は台湾で仕事をしていました。台湾はスニーカー好きな人が多く、私も(ナイキのスニーカー)『エアジョーダン』をスーツに合わせ、プレゼンをしていました」

――プレミアムカーという言葉を使われていますが、アウディはラグジュアリーという表現は使わないのですか。

「社内用語としては『プレミアムカー』であり、『ラグジュアリーカー』という言い方はあまりしません。一般に『高い車=ラグジュアリー』であるというならば、その既成概念に当てはまります。ですが、ラグジュアリーカーという言葉はもう少しコンサバティブなイメージで、思い浮かべるのはロールス・ロイスやベントレーといった車だと思います」

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伝統的なラグジュアリーには「やり過ぎ感」も