目指すのは使う人を圧倒しないブランド アウディWhat is LUXURY?  アウディジャパン ブランドディレクター マティアス・シェーパース氏

2022/5/23
地球の未来が危ぶまれる中で高まるSDGs(持続可能な開発目標)の意識。一方で、世界各地で顕在化する格差社会。様々な構造が不安定化し、従来の価値観が大きく揺らいでいる。ファッションなど消費財の世界でも、サステナビリティー(持続可能性)やカジュアル・オールマイティーが太い価値軸となり、ステータスやハイセンスの象徴であった「ラグジュアリー」の概念が存在感を失いつつある。時代の転換期にラグジュアリーの定義は修正を迫られるのか。今後も付加価値として消費者に受容され続けるのか。関係者へのインタビューで探る。
「お客様がアウディを購入する理由として、SDGsという新しい次元が1つ増えた」と話すフォルクスワーゲングループジャパン社長兼アウディ ジャパン ブランド ディレクターのマティアス・シェーパースさん(東京都品川区のアウディジャパン本社で)

独フォルクスワーゲン(VW)の日本法人、フォルクスワーゲングループジャパンの社長兼アウディ ジャパン ブランド ディレクターのマティアス・シェーパースさんは、新型コロナウイルス禍によって自動車の利用価値が再発見されたと指摘する。「1000万円のアウディの電気自動車(EV)のシートにあえて再生素材を選ぶ消費者が増えている」とも明かす。SDGsというグローバルな課題のキープレーヤーである自動車メーカーにとって、現代の富裕層が求める新しいラグジュアリーの定義を探ることは極めて重要であると断言する。




コロナ禍で車の価値観を再発見

――コロナ禍によって価値観が大きく変わりました。移動手段としての車の価値も再認識されたと聞きます。

「確実にそう思います。仕事でも長時間・長距離を車で移動する欧州と違い、日本では通勤に車を使う習慣がそれほどありませんでした。東京―大阪間も新幹線の方が便利ですから。ところがコロナ禍になると、新幹線すら乗るのを避けたい、混み合う駅は嫌だ、という意識が強まりました。遠方にも車で出かける人が増え、車を利用する姿勢が大いに変わったと思います。コロナのインパクトはとても大きく、高級車販売の押し上げ要因にもなりました」

「アウディのEV『e-tron』は供給が全く追いつきません。半導体が足りないという生産工程の問題を差し引いても、予想以上の需要の高まりが大きく影響しています。コロナ禍を通して車の価値が再発見されたと言っても言い過ぎではないでしょう」

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「良いもの」の感覚に変化