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今回取り上げるのは『東大生の本棚』。国内の教育機関で最高峰とされる東京大学の学生に調査した結果をもとに、著者が読書を生きる力に変える読書術を解き明かしてくれる。「読書とは想像力だ」「読書からアウトプットを引き出す」といったスキルアップの技術をテーマにしながら、効果的な読書のあり方を解説してくれるのが本書だ。同じ読書をしていても、東大生という知的エリートはそこから何を見いだし、どう生きる力に変えるのか。読書という基本動作を通じて、学びの本質に迫ろうと試みている。次代を担う「若手リーダー」にも一読の価値はありそうだ。

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著者の西岡壱誠氏は1996年生まれで自身も東大生の一人。本書によると、偏差値35から東大を目指すも2年連続で不合格。一念発起し、3年目に勉強法を見直したといい、偏差値70まで学力を押し上げ、念願の東大合格を果たしました。そうしたノウハウを全国の学生や学校の教師に伝えるため、啓発活動に取り組んでいます。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』(東洋経済新報社)などの著書があります。

東大生の読書術から生きる力を学ぶ

東大生の読書術から生きる力を学ぶ

読書のカギは「創造力」

本書は大別して2部構成となっています。まず『「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方』と題した1部では、現役の東大生100人を対象にした調査結果をもとに、東大生の本の読み方、インプットの仕方、それを学力ひいては生きる力に変えるスキルについて解説を試みています。知的好奇心にあふれ、なおかつ情報処理能力にたけているとされる東大生が、本をどう読み、どう力に変えているかを詳述しています。「東大生が子どもだった頃の読書とは」『「繰り返し読みで」で「読む力」と「書く力」を鍛える』などといった内容をテーマにしています。ポイントは、本を選ぶ・読むというスキルに加え、書評を書く、本をテーマにディスカッションをして議論しようと、積極的にアウトプットを試みる傾向があるのだと指摘します。

続く2部では具体的な著作を挙げて、東大生のおすすめ本の解説に入ります。司馬遼太郎の『坂の上の雲』や宮部みゆきの『模倣犯』、東野圭吾『秘密』といった小説だけでなく、手塚治虫『ブラック・ジャック』や中沢啓治『はだしのゲン』といった漫画にも幅を広げて、東大生が本のどこに目をつけて、どう読んでいるかを解説しているのが特長です。

読書のカギとなるのは、創造力。いかに相手の立場に立った視点で、本を読み進め、そこから何を学び取るか。その読書術にスポットを当てています。

究極的に言ってしまえば、人間は他人の感情を完全に理解することはできません。共感したり、想像したりすることはできても、100パーセントそのままの他人の感情を理解することは不可能と言っていいでしょう。
たとえばはじめて月に行った人の気持ちを理解することはできません。はじめて月面に降り立った時の感動、感情を、そのまま再現することは不可能なのです。
しかし、月に行くまでの過程を理解したうえで、月に行った瞬間の気持ちを体験することは可能です。それが、物語を読むという行為の効果のひとつ、「追体験」です。
「追体験」とは、「他人の体験を、作品などを通してたどることによって、自分の体験としてとらえること」(デジタル大辞泉)。
分では体感できないことや、自分の中にはない想い・考え方を、物語を読むことで理解する。理解して、現実世界でも他人に対する想像力を養う。これは、物語を読むことでしか身につかない力でしょう。
「でも、それにどんな学習効果があるあるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、どんな勉強においても「他人に対する想像力」は必要になるのです。
(Part1 東大式「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方 50~51ページ)

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