中高年世代のビジネスパーソンにとっては、日々の健康維持に役立つものを返礼品に選ぶ手も。寄付額は少々張るが、京都府向日市のオムロンのウェアラブル血圧計(同25万8000円)やエアウィーヴのベッドマットレス(シングル用、愛知県幸田町で同29万1000円など)のように毎日使えるものから、大阪府大阪狭山市の「PET/CTがん検診コース」(同20万円)や神奈川県小田原市の「脳ドックコース」(同16万5000円)といった詳細なメディカルチェックまで、いろいろ選択肢がある。
アニメ好きの家族がいるなら、返礼品はファン垂涎(すいぜん)のアニメグッズの宝庫でもある。大阪府高石市ではアニメ『鬼滅の刃』の主要キャラクター、竈門炭治郎、竈門禰豆子、嘴平伊之助の再現性の高い一点物のリペイントフィギュア(同各17万円)が人気を呼んでいる。『名探偵コナン』の作者・青山剛昌氏の出身地である鳥取県北栄町には、ぬいぐるみやタオル、バッグなど「鳥取限定コナングッズ詰合せ2021年度版」(同1万7000円)等のオリジナルグッズがそろう。
レアな体験 寄付先で楽しむタイプも
さて、返礼品の中で近年目立って増えてきたのが、寄付先の自治体での体験型アクティビティーだ。旅行券や宿泊券、食事券、テーマパークやアミューズメント施設の入園券、花火大会の入場券、ゴルフや乗馬、マリンスポーツなどの利用券などに加えて、地域の特性を生かした農業、漁業、伝統工芸、グランピング体験など実にバラエティー豊かな「ふるさと体験」が用意されている。
たとえば東京都渋谷区からは、区内のレザンファンギャテ(ペアランチが同3万4000円)、Sincere BLUE(シンシアブルー、ペアディナーが同5万円)といったミシュランガイド掲載店や掲載店の系列店での食事券がもらえる。東京ディズニーランド、東京ディズニーシーがある千葉県浦安市の返礼品には、新たに、東京ディズニーリゾートパートナーホテルである浦安ブライトンホテル東京ベイの宿泊券(スタンダードペア宿泊同12万円)や食事券(ペアランチセット同2万円)が加わった。
今年から返礼品の提供を始めた長野県軽井沢町も、町内の星野リゾート(星のや軽井沢、軽井沢ホテルブレストンコート、BEB5軽井沢)の共通宿泊ギフト券(1万5000円分が同5万円)や、観光列車「ろくもん」の食事付きプラン・ワインプラン(2名で同11万円)など、レジャー関連を充実させている。

ふるさと体験には、担当者が知恵を絞ったユニークなものが多い。文化財ファンにオススメしたい1つが奈良県斑鳩町の例だ。未盗掘古墳の発掘として注目された藤ノ木古墳の通常は入場できない石室を解説付きでゆっくり見学できるプラン(最大2名、同5万円など)がある。自然を満喫できる楽しみも。山梨県山中湖村に1万円を寄付すると、写真でしか拝めない「ダイヤモンド富士」の観賞場所に案内してもらえて撮影方法や富士山の歴史に関するレクチャーも受けられる(鑑賞は11月~2月の期間限定)。神奈川県三浦市では、関東圏の寄付者を対象に出張サービスでマグロ1本の解体ショーを行っている(同50万円)。
自治体が現地でのレジャーや体験の返礼品に注力する背景には、地域の良さを広くアピールし、認知度や観光需要の上昇に結び付けたいという思惑がある。これに加えて、昨今はふるさと納税を都市部からの移住者の呼び水にしたいという思いもあり、北海道美幌町の移住体験リノベーション住宅1カ月利用券(1家族まで、家具や調理器具付きで同35万円)、栃木県小山市の「古民家『まなかのいえ』1泊2日貸切宿泊体験&小山市案内ツアー」(最大2名、同8万4000円)など、移住希望者を対象にしたプランも増えている。
恒久的なポイントためれば高額返礼品視野に
こうしたふるさとの逸品や体験を網羅した、総花的なカタログギフトを用意している自治体もある。最近はポイント制を採用する自治体が増え、自治体によってはポイントを恒久的にためられるので、継続的に寄付をしていけば高額返礼品も視野に入ってくる。年末の駆け込み寄付で返礼品を吟味している時間がないという場合は、ポイント制度のある自治体に寄付をしておく手もある。
ただし、ここで気を付けたいのが、前回お伝えしたように、ふるさと納税の制度は青天井で利用できるわけではないということだ。所得税や住民税が軽減されるのは、その人の年収や家族構成などによって決まる「限度額」まで。限度額を超えた部分は「純然たる寄付」として扱われ、「節税効果」の利点は享受できなくなる。制度の恩恵に預かりたいなら、限度額をにらみつつ、トータルの寄付額をその範囲内にしっかり収めるように注意しよう。
最後にもう一つ、おさらいともなる注意点を。ふるさと納税は返礼品と寄付金受領証明書をもらえば終わり、ではない。所得税や住民税を軽減するためには、その後に確定申告などの手続きが必要になり、そこにはビギナーがはまりやすい落とし穴もある。そこで次回は、ふるさと納税の手続き上の注意点や、さらにお得に活用する方法を詳しく説明したい。
(ライター 森田聡子)