日経ナショナル ジオグラフィック社

ボーレス氏がこのガイドブックに着手したのは、スウェーデンの中でもあまり知られていない地域と、情報が少ない無料宿泊小屋を紹介するためだった。彼は、カールバリ氏と共に2017年にこのガイドブックを出版し、2021年には改訂版を出した。

スウェーデン北部のビョルンランデット国立公園にある小屋のポーチでくつろぐ宿泊客(PHOTOGRAPH BY MOA KARLBERG)

「スウェーデンでは、昔からの家族の小屋を所有している人たちもいますが、そうした小屋を持っていなくても、宿泊用に提供されている小屋があるということを、知らない人も多いんです」とボーレス氏は言う。彼らのガイドブック(スウェーデン語のみ)は、そうした小屋の場所や詳しい情報を伝えている。ウェブサイト「Naturkartan(英語)」からも同様の情報が得られる。

ボーレス氏たちのガイドブックの発行に加えて、新型コロナの影響でアウトドアへの関心が高まったこともあり、こうした小屋の一部は広く知られるようになった。今では毎年、複数の小屋を巡り、作り付けの寝台に眠り、見ず知らずの人と暖炉を囲んでおしゃべりを楽しむ人たちがいる。

ウプサラにある無料宿泊小屋の近くで湿原を散策する人(PHOTOGRAPH BY MOA KARLBERG)
スウェーデン北部にあるスンドベリスホルメン小屋の宿泊客。ロアネオ川でひと泳ぎするところ(PHOTOGRAPH BY MOA KARLBERG)

例えばエリーカ・アールンド氏とパートナーのクリステル・ムーバリ氏は、2017年にガイドブックを購入した。「それ以来、48軒の小屋に泊まりました」とアールンド氏は言う。「小屋で過ごすと、都会のアパートで暮らす日々のストレスから解放されて、リラックスできるんです」

すべての小屋には薪ストーブが備えられている。つまり宿泊客は、春にはカヤックやベリー摘みを楽しみ、冬にはクロスカントリースキーを楽しめるのだ。食料と寝袋さえ持っていけばいい。

「スウェーデン人は、森と深いつながりを持っています。小屋に泊まることは、そうした森を知る新たな方法なのです」とボーレス氏は言う。

スクレスコゲン国立公園の湖で食器を洗う、小屋の宿泊客(PHOTOGRAPH BY MOA KARLBERG)

(文 Jennifer barger、写真 Moa Karlberg、訳 三好由美子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年7月9日付]