
スウェーデンでは、他人の土地であっても、誰もが自然の中を自由に散策したり、自転車に乗ったり、スキーをしたり、キャンプをしたりすることが認められている。これはスウェーデン語で「アッレマンスレッテン」と呼ぶ自然享受権で、スウェーデン文化の大切な一部だ。
手つかずの自然が残る原生地域や公園の多くで、テントを張ることが許されているほか、誰でも無料で滞在できる小屋も用意されている。もともとは狩猟小屋や釣り小屋として建てられたものもあれば、かつて別荘として使われていたが、今は政府や自治体に寄付された家々もある。

こうした小屋は簡素なものから豪華なものまで、スウェーデン中に250軒以上ある。スウェーデン人の写真家モア・カールバリ氏は、ライターのシェル・ボーレス氏と共同で制作したガイドブック「ストゥーグランデット(小屋の国という意味)」で、数十の小屋を取り上げている。


「スウェーデン国内で、必ずしも観光スポットとは言えない場所の文化や歴史について知りたかったんです。たくさんの森や湖を訪ねました」と、カールバリ氏は言う。美しい風景が広がるラップランドやバルト海沿岸など、さまざまな地域の住居や夢のような景色を写真と文章で紹介している。
青いクジャク柄の壁紙と毛織りの敷物がある19世紀の小屋もあれば、二段ベッドを備えた小さな赤い木造小屋もある。「私は自然の中で過ごすのが好きですが、筋金入りのキャンパーというわけではありません」とカールバリ氏は言う。「こうした小屋では、テントよりも快適にシンプルな生活を楽しめます。雨に降られても安心です」


カールバリ氏は自然の中で出会った多くの人々の姿も写真に撮っている。フリースにくるんだ子どもを背負って森の中を散策する家族や、質素なテーブルでコーヒーを飲む友人グループなどだ。「こうした小屋では多くの出会いがあります。予約はできず、誰にでも開放されていますからね」とカールバリ氏は言う。