トイ・ボックスの醤油ラーメン。うま味に深みと厚みがあり、食べ手を瞬く間に魅了する

本年1月に同店へ足を運んだ時も、店主は「麺の改良を試みており、現在、試作を繰り返しているところです。もしかすると、この麺のブラッシュアップが成功すれば、自分が思い描く『淡麗醤油』の理想形へと一歩近づくかもしれません」と、おっしゃっていた。

なので、今(2月)、醤油ラーメンを食べると、より一層洗練を遂げた味に出合えるかもしれない。そう、『トイ・ボックス』に関しては、以前実食した際に獲得した経験が、全くアテにならないのだ。もちろん、良い意味で。

手間ひまかけて華やぎある味わいを演出

さて、現在の「醤油ラーメン」のスープは、比内地鶏、名古屋コーチンの丸鶏とガラを軸に、山水地鶏、川俣シャモを合わせたもの。鶏100%とは思えないほど、うま味に深みと厚みがあり、口にした食べ手を瞬く間に魅了する。このスープにしても、使用する鶏のクオリティーを際限なく高めてきたことで、現在の味へと至った。

オススメは醤油ラーメンだが、ほかにもメニューはある

カエシに用いる醤油も、7種類と多岐にわたる。それだけではない。華やぎのある味わいを演出するために、仕上げに更に醤油を注ぎ込む手間ひまのかけようだ。一見、極めてシンプルに見えるこの「醤油ラーメン」だが、ひと口召し上がっていただけば、店主がその裏でどれだけの試行錯誤を重ねているか、たちどころに理解できるはずだ。

日本全国でラーメンを出す店は現在、3万5000軒ほどあると言われているが、「生涯のうちに、一度は足を運んでおかないと後悔する」と言い切れるラーメンを提供する店は、両手で数えられるほどしかない。『トイ・ボックス』は間違いなく、そのひとつに違いない。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。