鶏をメインに配した淡麗醤油ラーメンは、ともすれば、鶏のみの力に頼りがち。だが、鈴木店主にとって鶏は、あくまで「丼」を構成する要素のひとつに過ぎず、そんな視野の広さも、多くのラーメン好きの支持を集める理由のひとつではないかと思う。

このスープに合わせているのが、提供前に丹念な手もみが施された自家製麺。店舗オリジナルの小麦粉を用いたみずみずしい超多加水麺は、小麦の風味も芳しく、ひとすすりで、味覚中枢が幸福感で満たされる。総じて、22年現在における首都圏の手もみ麺タイプの淡麗醤油の中では、アタマ一つ抜けた存在と言えるだろう。未食の方は、機会を捉えてぜひ一度、足を運んでもらいたい。
開業から8年余で頂点へ!進化続ける1杯
◎ラーメン屋 トイ・ボックス(東京・三ノ輪)
2店目は、東京の下町・三ノ輪にひっそりと佇(たたず)む『ラーメン屋トイ・ボックス』(荒川区東日暮里)。この店は、私が審査員のひとりとして関わる『業界最高権威 TRY ラーメン大賞2021-2022』でも、大賞に輝いている。時代の先端を行き、次代のラーメン界を担う名店のひとつだ。

もちろん、今回ご紹介する「醤油ラーメン」も、しょう油ラーメン部門1位の栄冠に輝く。日本において現在、トップクラスの「淡麗醤油」と言えるだろう。
この『トイ・ボックス』を切り盛りするのは、山上貴典店主。最高の1杯を創り上げるために、絶え間なく味の改良を試みるラーメン界の鬼才。他の実力店にも、多かれ少なかれ同様の傾向は見受けられるが、同店に関していえば、ほんの1年でも足を運ばずにいると、全くの別物へと変化しているほどに進化度が激しい。